りん子のアパート

2023年7月吉日 記載

1987年8月15日公開  

第38作「男はつらいよ 知床慕情」より

5年前に父親の反対を押し切り、駆け落ち同然で東京へと出て行った上野りん子(竹下景子)。

ある日突然、父親の暮す北海道知床の実家へと一人帰ってくるのである。


りん子の話によれば、3ヶ月ほど前から夫とは別れ、アパートにひとりで暮らしているという。

そのアパートを引き払うため、再び上京するりん子なのであった。

りん子ちゃんのアパートって・・・

どこなんだろう?

そんな疑問から今回のロケ地探しはスタートした。

ちなみに今回のロケ地もどの関連本にも紹介されていないし

どなたかが行かれたという事実も見つけていない。

もし見つかれば新発見のロケ地となる。


また、今回も本編をじっくり楽しみたい、という正統派の方には

かなり刺激的な内容になっておりますので、これより先にお進みになるのは

自己責任にてお願いいたします。


映画の流れで調査場所を確認

① 最初のシーン

小田急線の電車が走る高架。向こう側には特徴的なアパートが見える。作りからして現存している可能性あり!

② 電車で移動しているシーン。

車窓からはヒントは難しいかも。

③ 引っ越しの荷造りをするりん子。

りん子のアパートを特定できるヒントが映っている。

窓の外に見える「・・・車場完備」の文字。

おそらく「駐車場完備」。

お店か何かがあるようだ。

④ 隣には白いタイル外壁のマンション。

笹野さん登場。

アパートの管理人。

大きなすりガラスが特徴的な玄関ドア。

女性が一人で暮らすには、少々物騒な感じがするのだが・・・。

⑤ 窓の外には小田急線の電車が通り過ぎる。

小田急沿線のアパートと推測できる。

のロケ地について

小田急線の電車が走る高架。

ここは探し始めてすぐに発見することができた。

向こうに見えているアパートは「都営千歳台一丁目アパート4号棟」

場所は、東京都世田谷区千歳台1丁目10−4

小田急小田原線、千歳船橋駅と祖師ヶ谷大蔵駅の丁度中間辺り。

で、実際に現場へ行ってみた。

目の前にマンションが建ってしまい、現在では映画のように小田急線を見ることはできなくなってしまった。

撮影当時は↓こんな感じに見えていたのではないかと思われる。

次に小田急線と「都営千歳台一丁目アパート4号棟」が見える位置に移動。

高羽アングルジャストではないが、丁度電車が来たので撮影してみた。

B班撮影のこのシーンは、ほぼここで間違いないと思われる。





のロケ地について

電車で移動しているシーン。

ここは一旦スルー。

解説は後ほど

のロケ地について(③と④は飛ばします。)

ここが今回のメインとなる

りん子ちゃんのアパート。


<わかっているポイント>

1、小田急線の電車が走る線路脇にあるアパート。

2、アパートの近くには踏切がある。

3、駐車場完備の文字が書かれた建物が近くにある。(③のシーンより)

4、隣には白いタイル外壁のアパート。(もしくはマンション)(④のシーンより)

5、珍しいタイプの玄関ドア。(④のシーンより)


こんなところか?


以上を踏まえ捜索開始!


先ずは・・・

①の場所から想像して、新宿↔️小田原間の「小田急小田原線」を捜索。


簡単に見つかると思いきや

これが全く見つからない・・・。


小田急小田原線は、撮影当時から一部線路が地下に潜ったりしているため

現在の航空写真と、撮影当時の航空写真と、両方で比較しながら捜索。

もし地下に潜ってしまった場所だった場合、踏切は無くなっているため

手掛かりは隣の白いタイル壁のマンションしかなくなる。

そのため、踏切と白いマンションを同時に探してみた。


しかし、これでもまた見つからず・・・。


ならばと、当時に一番近い小田急小田原線の前方車窓動画をYouTubeで検索。

動画にて踏切と白いマンションを徹底的に捜索!

しかし、しかし、これでもまたまた見つからず・・・!

どうなっているんだ?

かすりもしない。

これではらちがあかないと判断し、もう一度状況を整理してみた。

この↓シーン・・・

隣のマンションはこちら側(カメラがある側)に

ベランダが向いている・・・。

(仮説:1

大概ベランダは南側を向いているので、カメラ側は南なのではないだろうか。


となるとこの↓シーンで窓の外に見えている小田急線は

画面奥から手前(カメラ側)に向かって走っているので

もしかしたら南に向かって走っているのではないだろうか?

(仮説:2)

となるとこの電車は南北に走っているのではないだろうか!




<2つの仮説から>

そうなると東西に走る小田急小田原線ではなく・・・

窓の外に見えている電車は、南北に走る小田急江ノ島線なのではないだろうか?




ということで、今度は小田急江ノ島線を調査!

江ノ島線は大船撮影所から車で30分くらいの場所。

このシーンは竹下さんだけでなく、笹野さんもご出演されているので

二人のスケジュールを考えても近場の方が何かと都合が良かったはず!


もう俄然、江ノ島線が怪しい!!

で、同じく踏切を探して回る。

今度こそ!この推理が外れたら、もう探しようが無い!


祈るような気持ちで Googleマップ上の小田急江ノ島線を

踏切と奥に映る横に大きめの建物(工場?)を目標にして探してみた。

しかし、それでもやっぱり見つけられず・・・

もう半分諦め状態で、最後の頼みの綱である動画での確認を試みた。

同じく前方車窓動画。

で、探すならなるべくその当時の映像が良いと思い探したが、

YouTubeでは1980年代くらいの古い動画は見つけられず・・・


それでも諦めず探してみたところ、動画は「ニコニコ動画」にあった!!!

1980年くらいの前面車窓動画!!

動画は藤沢から新宿へと向かう電車の前方車窓。

どんどん進んでいくと・・・

お!似たような大きな建物を右側に発見!

ここか!?

もう一度、映画のシーンを確認。

横に長い建物は何となく似ているが窓の形が違う・・・。

そして、左側の柱にくっ付いている黒っぽいものが無い・・・。

ウ〜ン・・・

これは違うな・・・。

ところで、この黒っぽい物って何?

調べてみた!!

調べてみた結果、この黒いものは

踏切動作反応灯  と   特殊信号発光機

踏切動作反応灯

特殊信号発光機

🔳 踏切動作反応灯《ふみきりどうさはんのうとう》

踏切保安装置が正常に作動していることを列車等に知らせる表示灯。白色灯が1灯だけ点灯するもの,複数個が点灯するもの,X字形に点灯するものなどがある。民鉄には設置されていることが多いが,JR線にはあまり設置されていない。踏切表示灯ともいわれる。

🔳 特殊信号発光機《とくしゅしんごうはっこうき》

踏切支障があったとき,ホームの非常停止ボタンが押されたとき,雨量計/風速計などの計測値が規定値に達したとき,落石警報装置が作動したときなどの緊急時に発光信号を現示する装置。

りん子ちゃんの映る横の窓から外の景色が見えている。(白い点線内)

そこに映っていたのは

架線柱、特殊信号発光機、踏切動作反応灯。(ピンク囲み内)

奥には踏切、そして何やら柵で囲われたお立ち台のような物もある。

🔳 架線柱がせんちゅう

   鉄道関係者と話をしていると、しばしば「がせん」との読み方が聞かれます。線そのものだけでなく、架線を支える架線柱も「がせんちゅう」といった具合です。

ただし辞書類での読みは「かせん」で、濁る読み方は少なくとも一般的な辞書では確認できません。なぜ「がせん」なのでしょうか。

 ある鉄道関係者によると、「河川」との混同を避けるための業界用語だそうです。これが重要になるのは、たとえば無線のやりとり。「河川の架線が……」といったときに「かせんのかせん」では分かりづらいわけです。

参考:他サイトより

もうこれしかない!ということで最終目標は、

踏切近くにある架線柱と

そのすぐそばにある特殊信号発光機踏切動作反応灯

最終目標を探すため、再び藤沢から新宿方面へと向かってみた。

最後の仮説が正しければ、

左側に特殊信号発光機、踏切動作反応灯があるはず!


そして動画を進めていくと・・・



あった!

これはかなり似ている!

では最近の動画ではどうだろうか。

同じ場所を直近の全方車窓動画を確認してみた。

踏切動作反応灯はなくなっているが、特殊信号発光機はある!

しかも柵で囲まれたお立ち台のようなものもある!

もう一度映画と比較してみよう!

見れば見るほど似ている!

だが今度は右側に横長の大きな建物が無い・・・。

少し不安・・・。

この場所を特定するために、もう一度動画を確認。

このシーンの手前で映っている駅は「桜ヶ丘駅」

そして「桜ヶ丘駅」を過ぎてから2個目の踏切だ!

で、それを元に現在の Googleストリートビューを開いてみると・・・

いきなり飛び込んできた画像がこちら!↓

何と!

画面左側に大きく映る建物は

これまでずっとずっと、ず〜っと探しに探していた、

白いタイル壁のマンションだったのである!

もういきなり過ぎて胸の鼓動が高鳴る!!

非常に映画とそっくり。

実は白いタイルの壁は珍しくないのだが、タイルが上下で交互になっているのは意外と最近では珍しい。

そして、ベランダの鉄柵と同じくらい厚み幅のあるベランダもこれまた珍しい。

その部分のタイルの段数も数えてみた。

映画とピッタリ同じ数!(12段)

しかし、りん子ちゃんのアパートがあったであろう場所に

現在はそれらしき建物は存在していない。

では数年前ならどうか?

全くもって何と便利な Googleストリートビューのタイムライン!

過去に戻れるのは何とも頼もしい!!!

すると・・・2011年1月のストリートビューに

あっ!あった!

わずかに見えるアパートが、

りん子ちゃんの住んでいたアパートだ!


あの大きめのすりガラスで特徴的な玄関ドアも同じ。

線路の反対側からも見てみた。

全体的な外観がわかるりん子ちゃんのアパート。

部屋は2階の右側窓の方。

そして、そして何と!

「駐車場完備」の看板も発見!

この建物は「つり具の上州屋」さん。

当時の航空写真より

黄色線で記した方向のカメラアングル。

赤色線で記した方向のカメラアングル。

もうこれだけ物証が揃えば間違いない!

というわけで、

こちらも実際にロケ地へと行ってみた!

目的地、「桜ヶ丘駅」に到着。

駅前のロータリー。

この場所に約3ヶ月間、りん子ちゃんは住んでいたのだ。(勝手に妄想^^;)

最初の踏切から駅方向を望む。

目指すは次の踏切なのだ!

その踏切の少し手前に、りん子ちゃんのアパートはある!

(正確にはあった。)

ドキドキしながら歩いていくと・・・

突然その路地は右側に現れた!!

ここだ!!!

この路地の奥にりん子ちゃんのアパートは存在していたのだ!!

2014年のストリートビューでは、まだ存在している。

奥に進んでいく。

現在は違う建物がある。

間の奥に見えるマンションが映画のシーンに出てきたマンション。

映画と比較してみよう。

手すりの色は違っているが形は全く一緒。

実際に当時の建物を見るというのは

やはり感動モノである!!

では、線路の方へ進んでみよう。

見えた!

踏切と特殊信号発光機!そして柵に囲まれたお立ち台!

映画のシーンとの比較

世界初登頂!!!(笑)

踏切近くより

特殊信号発光機の裏側から撮影

線路の向こう側より特殊信号発光機の裏側を撮影

線路の反対側を見てみた。

この白い建物に「駐車場完備」と書いてあったのだ。

そして当時の住宅地図からアパートの名前が判明!

りん子ちゃんのアパートの名前は

ハヤシ荘

隣のマンションは

映画の頃は「桜ヶ丘ハイツ」。

現在は「リバーサイド桜ヶ丘」

踏み切りからアパートのあった辺りを眺めてみた。

画面中央辺りが、りん子ちゃんのアパートがあった場所。

踏切内から「桜ヶ丘駅」方向。

場所は、神奈川県大和市柳橋3丁目であった。

丁度電車が来たので動画で撮影してみた。

これにて、りん子ちゃんの住んでいたアパート捜索は完結!

のロケ地について(再考)

ということで、最後に残った

電車で移動しているシーンへ戻る。

一旦スルーしたこのシーン。

当初は車窓だからということで

わからないだろうと思い諦めていたが

せっかくここまできたのだから

見つけてみたいと思いチャレンジ!

これもきっと同じ小田急江ノ島線なのだろうと

結構軽い気持ちで江ノ島線沿線を探したのだが・・・

これがまた見つからない!!^^;

どこをどう探しても見つからないのだ!

またもや迷宮入り!

一応念のため小田急小田原線も探してみたが

やはり見つからず・・・

そこでこちらも、もう一度情報の整理!


今度は電車自体に注目してみた。

1、車両の外側の色は白っぽい?もしくはクリーム色?

2、袖仕切りが横に2本


で、検索してみた。

すると・・・

小田急線には横2本の袖仕切りタイプの電車は

ないのだ!

縦に2本のタイプはあるのだが・・・。

では横2本タイプの袖仕切りを採用したのはどの電車だったのか?

これまた検索!


すると・・・

どうやら京王線にあったようだ。

で、車両は6000系?

残念ながら電車については全くの素人。寅福には何のことやらさっぱりである。

そうなってくると頼るは寅さん仲間の面々。

頼れる皆さんにダイレクトに聞いてみた。

すると鉄道関連に詳しい矢尾さんより、とても貴重なご助言を頂けた!


「もしかしたらこれは京王線ですかね?

当時、東京で白い電車といえば京王6000系。

映画の頃なら京王多摩センターまでの区間と思いますよ。」


矢尾さん!ありがとうございます!(T . T)

よくわからなかったことが、矢尾さんからのお話で一気に確信へと繋がっていった。

今度は自信を持って京王線を調査!

今回もYouTubeで車窓を確認してみる。

京王線を新宿方面に向かってのYouTube前面車窓動画で探してみると・・・

あった!すぐに発見!!!

出典:YouTube

 Googleで航空写真を確認。

出典: Google

場所は京王線「つつじヶ丘駅」を過ぎて新宿方面へ向かったすぐの場所!

⚫︎ この場所が、映画の車窓と同じ場所である事の検証 ⚫︎

1989年の航空写真との比較。

当時と同じ建物は丸印の3件。

窓の外に見える景色に注目!

りん子ちゃんの頭の後ろの窓から見える景色(白い点線内)を切り抜き、繋ぎ合わせてみた。

それぞれの建物に色別に印を付けてみる。

1989年の航空写真を該当する部分だけ切り取る。

映画と同じような角度になるよう写真を回転させ向きを合わせる。

その上に映画から切り出した写真を合わせて線で結んでみる。

すると建物は全て一致。

現在もある茶色屋根の建物も確認できた!

この場所は、東京都調布市若葉町1丁目周辺

検証の結果、車窓のシーンはここである事が証明された!

で、こちらも同じく行ってみた。

映画を意識して撮影。

丁度電車の一番空いている時間帯で撮影することができた。

電車の車窓から同じタイミングで撮影してみた。

映画と比較

りん子ちゃんの頭の後ろに見えている赤い屋根の家が、

撮影当時から同じである。

それを意識して動画撮影してみた。(途中から左下にインサートしてます。)

それぞれの位置関係はこちら。↓

この3か所を1日で駆け巡りました。^^;

結論!

りん子ちゃんは東京ではなく神奈川に住んでいた!

こうして今回のロケ地巡りは無事全て終了したのであった!

いや〜、とにかく暑い一日だったぁ〜  (^^;;


ご清聴ありがとうございました。

おしまい。