第22作・茶畑とSL
22作『男はつらいよ 噂の寅次郎』 (1978年12月27日公開)
・印象に残るエンディング
「茶畑とSL」
日に一度だけ運行している大井川鉄道のSLを撮影するため、朝7時頃に東京を出発し約4時間かけ午前10時50分頃に現地入り。
SLの進行方向を映画と合わせたいので、狙うは新金谷駅11:52発千頭行きの「SLかわね路1号」
撮影場所は本編で景色とSLがしっかり映る「干し柿とSL」 と「茶畑とSL」
この2か所のポイントを選んだ。
最初に行ったのが「干し柿とSL」
場所はこちら
大井川鐵道大井川本線 大和田駅そば
同じSLで狙いたいところだがタイミングが非常にタイトなため、こちらの場所は「機関車トーマス」で狙ってみた。
エンディングでほんの数秒しか映らないロケ地ではあるが非常に印象に残る。
そのロケ地の現在がこちら
消火栓や白いガードレールそして何より大きな家が建ったためかなり印象が変わってしまったが撮影された場所は間違いなくここである。
この場所を見つけた山田組ロケハンの底力を改めて感じずにはいられない。
そしてこのロケ地を事前に発見してくれた寅ファンの方々には本当に感謝である。
トーマスがくるまでの間、そばで草取りをしていた地元の方と少しお話し。なんであんたたちはこんな場所で撮影する?と至極当たり前なご質問。
映画「男はつらいよ」でのロケ地であることをご説明。当時の貴重な情報を得られることもあるのでこういった四方山話はとても大切なのである。
そうこうしているうちに遠くから汽車の音がしてきた。その瞬間に息をひそめる。トーマスといえどもこちらも一回勝負。緊張の瞬間、段々音が大きくなる。
そして遂に画面越し右側より汽車が現れた!
「機関車トーマス」・・・あまりにも存在感ありすぎで思わず失笑。腰が抜けそうになった。
予想以上に存在感のあった「機関車トーマス」
映画の機関車と合成してみた。
次の撮影ポイントへ移動
大井川鐵道大井川本線 下泉駅手前
あの感動のエンディングシーン
今回のメイン
「茶畑とSL」
この場所までは車で約17分
距離にして約13㎞
直ぐに移動すればギリギリ両方SLで撮影できたかもしれないが
何があるかわからないので無理はせず安全策で行動。
こちらを当日1便しかないSLの時間に合わせる!
泣いても笑っても勝負は一回のみ!
直ぐに移動すればギリギリ両方SLで撮影できたかもしれないが何があるかわからないので無理はせず安全策で行動。
こちらを当日1便しかないSLの時間に合わせる!泣いても笑っても勝負は一回のみ!
干し柿シーンの撮影を終わらせて茶畑ポイントに車で向かった。
失敗は許されない‼
映画で最後のシーンは下から上にカメラを上げていくので全体を把握するためにふたつのシーンを上下でつなぎ合わせてみた。
つなげてみるとこうなる。
そして現在の姿がこちら!
どうだろう。ほぼ映画のアングル通りである。間違いなく場所はここ。感動である!
映画のシーンに合わせて切り取ってみた。
そしていよいよ本番!!
12時43分頃、背中の方から汽車の音が段々近づいてくる。
音がすぐ後ろに迫る。
いまだ!!
走りすぎる蒸気機関車。遠くで汽笛が聞こえた。大興奮の1分間であった。
それにしても客車の増量。大井川鉄道大人気のようである。
撮影時は興奮していて無我夢中だったが、写真を確認してみると手前の草むらがやはり撮影に大きな障害となってしまった。
少し角度は違っているが同時撮影しておいたビデオの方に淡い期待。そのキャプチャーがこちら。
何とか雰囲気は伝わってくる感じだがこちらも手前の草むらが邪魔で肝心のSLが半分以上見えていない。
そして季節が夏ということもありSLの煙も映画ほどには多く映っていない。色々と不完全な写真ではあるが現場では生のSLの音を初めて聞けたこともありとても満足できる瞬間を味わえた。
SLのあの段々と近づく独特な音は電車では味わうことができない。よくSLの走行音をガタゴトと表現されるがその意味がようやく理解できたように思う。そして独特な音のお陰で「一所懸命」という印象を受ける。それがとても人間ぽく思える要因なのかもしれない。
現在の風景と合成したSLのバックショットを最後にどうぞ。
SLつながりでいくと最後に泉ピン子さんと寅さんが再会した時に車窓風景の撮影ポイントにも行ってきた。
ここは「茶畑とSL」の撮影ポイントからほんの少しだけ南に行った場所である。
線路も一緒に写すと電車内のシーンがより一層蘇る。
天気に恵まれ本当に良い一日だったが、このSLシーンは絶対に失敗できない緊張感の中だったことも手伝い今でも感慨深く思える。