タコ社長の家発見!

2018/10/13

「タコ社長の家発見!」  男はつらいよ

第40作

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日

1988年12月24日公開


この作品ではとても貴重なモノが映っている。

それは…


タコ社長の自宅


バブル絶頂期で土地の話題が何かと多かった時代である。



タコ社長の自宅は「朝日印刷所」でもあるのだが

その印刷所内は度々映画に登場している。


出典:第6作 男はつらいよ 純情篇


第6作では「朝日印刷所」のくだりが多く

タコ社長の家の中やその家族が映ったりもしている。


また印刷所の玄関先と思われる場所なども映る。

「朝日印刷所」は勿論映画内でのみ存在するものであって

その場所については特に誰も気にしないのが普通である。



映画が好きで物語に浸って考えるならば

「朝日印刷所」は「くるまや」の裏手にあるのだから

大抵の方は柴又の参道の裏手に「朝日印刷所」はあるんだよ、と

想像を膨らませて楽しまれるのではないだろうか。



そんな方には幾分残念なお知らせだったのではないかと

今になって思うのは以前お伝えした

「第29作の新事実」である。


詳しくはクリックして↑以前の投稿をご覧頂ければと思うが

簡単に言えば「朝日印刷所」は実際には柴又ではなく

大船に存在していた!と言う話題であった。

(映画なのだから当然である。)

そして冒頭にもお伝えした

タコ社長の自宅として映るこの建物

当然大船近くの場所で撮影したに違いない、と

少しの疑いもなく勝手に思いこんでいたのだがその建物が

遂に発見されたので

ご紹介したいと思う。



それではそのシーンを振り返ってみる。


映画も約35分ほど経過したところでのカット。

帝釈天が映る。

恐らく「やぶ忠」さんの裏手の建物からの撮影と思われる。


そしてこのシーン。

?@

従業員の方?が何やら屋根の上に上がって

看板を持ち上げている。


そのままカメラはパンして

下にいるタコ社長や源ちゃん、備後屋さんが映る。

?A

タコ社長が何やら指示している。


そしてこのシーン。

?B

「この土地は絶対に売りません」

看板に書いてある。

当時こういった文言はよく目にした記憶がある。



この?@~?Bで映る場面が今回の調査対象。




一連のシーンでまず目標にしたのが

?@?Bに映る鉄筋の建物。

現在でも残っている可能性が高いと考えた。



?@

ベージュ色の建物

?B

煙突の奥にある建物。

先ずは1975年の航空写真で

大船撮影所近辺を調査。


道路で区切ってブロック分けし

似たような建物が無いかを探していく。


その結果・・・

無い!


29作のように大船の撮影所近くで

撮影されたのではないのか?


まさか…

柴又?


半信半疑でもう一度映画のシーンを確認。


鉄筋の建物に気を取られていたが

よくよく見てみるととても特徴的な建物が!

右側に滑り台のような傾斜した壁。

これは何か手がかりになるかも。



Googleの航空写真で確認。

すると参道の裏手にとても良く似た建物が!

しかしその隣にあるであろうベージュ色の建物が無い。


偶然の一致?

いやいや、こんなにも似た建物はそんなにないはず。


ひょっとして以前はあったが現在は無いのでは?

という事で今度は1975年の柴又の航空写真で確認。


するとやはり隣にはそんな建物はない。


ところがその近くに映画と同じような

車が停められるようなスペースを発見!

黄緑色の点線囲み部分。その右の茶色囲みは

あの特徴的な建物である。


非常に怪しい…



ではあのベージュ色の建物はどこへ?


今度はGoogleearthで調べてみた。

高さを地面に近づけていくと・・・

するとベージュ色の建物が奥に現れた!


実は遠近法の関係で離れた場所にある建物も

角度によっては隣にあるように見えるのである!

高さは違うが映画と同じような角度に合わせてみると

同じような見え方になってくる!



再度1975年の航空写真で確認。

タコ社長の家(水色)をはじめ

見えている建物や屋根がどれも映画にあてはまる。



状況証拠は揃った!

あとは現地調査のみ!




という事で10月某日。

柴又へ行ってみた。

とても賑わう参道。

それを横目にいそいそと参道の裏手へ。


まず目に飛び込んできたのは見たことのある煙突。

もうその煙突を見ただけで思いは確信へ。



そのまま近づけないので

反対側にぐるっとまわってみた。


探してみたのはあの特徴的な建物。

あった!

奥にあのベージュ色の建物もチラッと見える。


窓のあり方や配管などどれも映画と同じ。

傾斜のある壁の上の縁も映画と同じく

左が少し大きく右にいくと若干小さくなる。これも同じ。


場所の特定は間違いない。

ではタコ社長の家は?



辺りを見渡し振り返ってみると…

あっ!あれは?

先ほどの煙突の手前にある建物…


看板を掲げていたタコ社長の家に

似ている!



映画と同じアングルで正面から見てみたいが

現在は大きなマンションが建っていて

その場所まで行けない!



どうにか同じアングルで確認できないモノか…



思案しながら辺りを巡っていると…

確認できた!

建物がかなり近くまで隣接しているため

映画のようなアングルが撮れない。


ギリギリ映画に近いアングルで撮影した写真がこちら。

今回は特別に許可を頂く事が奇跡的にでき

撮影することができた。

(私有地につき無許可での立ち入りはご遠慮ください。)




タコ社長の家は外壁こそ変わっているが

建物自体は当時とおなじ。

左横にある鉄筋のビルも同じ。

煙突は当時より左に移動している。


タコ社長の家は現存していた!!



ここはちょうど「高木屋」さんの裏手になる。


映画ではタコ社長の家は「くるまや」の裏手にある。

つまり「高木屋」さんは「くるまや」のモデルなので

「高木屋」さんの裏手にあったこのタコ社長の家は

映画の設定通りなのだ!


今回発見されたタコ社長の家、実は

映画の設定を忠実に再現していた!のである!!

う~ん、感慨深い。。。



本来はもう少し距離が離れ右斜めからの撮影だが

現在はこれが限界。

映画に近づけたアングルだと駐車場の隙間から少しだけ見える。

他を黒くして想像しやすくしてみた。

なんとなく雰囲気は伝わる?



まとめるとこんな感じで撮影されている。

これまで「朝日印刷所」と言えば

大船のセットや大船撮影所近くでロケされたものが主で

間接的に「朝日印刷所」が柴又にある事がわかるのは

第10作でのこのシーンくらい。

出典:第10作「男はつらいよ 寅次郎夢枕」


建物自体が柴又で証明されることはこれまでなかった。


しかし今回のタコ社長の家の発見により「朝日印刷所」は

ちゃんと柴又にあったことが証明されたのである!


一見何気ない当り前のような発見ではあるが

以上のような事から考えるととても重要な発見であったと思う。



真実は常に現場にある!

などと感激に浸る寅福なのでありました。

今回もまた長い長い内容にお付き合い頂きまして

誠にありがとうございました。

おしまい。