解明!別所線風景

2015/11/14

「解明!別所線風景」  男はつらいよ

第18作~寅次郎純情詩集


作品中に上田電鉄別所線が何度か映る。


先ずは外から映すこのシーン。

この撮影場所のほぼピンポイントはこちら!

舞田駅の踏切側 ピンク丸印付近


目印になったのはこの赤丸内の家

ストリートビューで確認

何とか家はまだ見える。後ろに見える山の稜線も同じ。

アップ

家の形が特徴的。

【1975年】

【2000年頃】

【映画】

【現在】

目印の家も健在

ここは比較的簡単だったが・・・




残念ながら電車と一緒の写真はジャストな高羽アングルに収められなかった。


突然の電車に慌ててしまった・・・これは個人の撮影スキルの問題。。。無念!

そして今回の本題は、寅とさくら、二人の車窓に映る風景を探す事。

寅の車窓

さくらの車窓






其の一 寅の車窓





初めての別所線。翌日の下見に駅へ行ってみた。






映画の流れでは別所温泉駅へ向かっているのだが

実はこの車窓は上田駅へ向かう逆方向!




目印を探してみる。

赤丸内にあるように家は特徴的。




背景の山の形からおおよその場所はわかるので

大体の予想はできた。






【1975年】

多分ここら辺と思われる。


【2000年頃】

かなり家が変わっていて、同じ家が見つからない…


そして肝心のストリートビューもその場所をピンポイントで確認できない。




そんな時便利なのがYouTube




これだけ有名な別所線。

車窓風景の映像はきっとあるはず!と思い探してみた。



あった!!やっぱり。


感謝感謝である。


その一瞬を切り抜いてみる。

ビンゴ!




場所はこの辺り。

現在は大きな建物があり

かなり見え辛くなっている。           出典:Google





実は今回の目標になったのは…

ピンク枠内の木々




この木々があるのは武高國神社

【1975年】

【2000年頃】


ラッキーな事にココの木々以外には

こんなにも立派な木々は他に無いのである

出典:Google







そして当然ココにも行ってきた。

実は電車内からの車窓も撮影すべく

朝の7:23上田駅発に乗って出掛けたのだが

まさかの濃霧!

う~ん。。。残念!





寅の車窓は山田組のよくある手法。

本編とは全く逆の方向へ進んでいくパターン。


やっぱり後ろの山々が

このシーンにはあっている。画になっている。







其の弐 さくらの車窓風景

さくらの車窓は2種類ある。




ひとつめはこれ

ココは家々がはっきり映っているので

さほど難しくはない。


問題はこちら


このシーンは当初探すことなど全く想定していなかったが、寅さん仲間でもあるr-sさんの

「このさくらの表情を見ると是非とも見つけたいと思って…」

というお言葉に感銘を受け

さくらの丸窓車窓と銘打って

探索することを決めた。




この車窓シーンはトータル

約15秒程度のシーンである。


別所警察からの電話を受けたさくらは

電車に乗って寅の身元引き受けのために別所温泉までやってくる。




まず大まかな場所の特定のために、比較的わかり易い最初の車窓を探してみる。



今回注目した家はこちら

この家は現在もあった。

上田市八木沢辺り


間違いない!場所を特定!!


で、実際に見たのがこちら


特定完了!


そうなると流れでいけば次のこのシーンは…

この緑の点線部分である可能性あり。

で、もう一度動画を検証してみると

丸窓車窓の最後の所でさくらの肩越しに一瞬赤い屋根が映る。

すこし画像を明るくしてみた。

アップ

こんな感じで手前に家があり

奥に赤い屋根の家があるのがわかる。

【1975年】の航空写真から

候補が3つ。



ストリートビューや航空写真でみてみるが、どうもしっくりと来ない。


もう一度、今度は赤い屋根の手前に映る家を少し時間を戻して検証。

車窓がもっとわかるように画面を明るくしてみた。

大屋根の下に小さな屋根。

玄関だろうか?

そして奥に何やら出っ張りのある屋根が…


こういった形の屋根は、結構よく見かける。

この屋根を探すだけだと途方もない時間が掛かる。


他に何かないか?

何度も何度も繰り返し観てみる。

奥に映る家の屋根が

これまた特徴的な事がわかった。


屋根の上の出っ張りは3つあることがわかった。

おそらくこんな感じの屋根。






この屋根は現在「蚕都上田」の歴史を伝える象徴的な建造物として

有名な上田蚕種協業組合事務棟の裏側にある建物の屋根である。

当時の上田市にはこういった屋根が複数あったのかもしれない。


そしてもう一つ分かったことが。

窓枠に注目!





丸窓の電車

その内側

さくらの丸窓 丸囲みに注目。

このように見えるということは、カメラはさくらを正面から見て

やや左斜めから撮影していることがわかる。


そして大屋根小屋根の家。


もし線路と平行にある家なら

その家の正面は電車の車窓からはそれ程見えないはず。

しかし、見てお分かりのように

この家の正面はしっかり見えている。

しかも電車が進んでいくのにそれ程見え方に変化がない。





ということは…


この家の角度はこの図に近いはず!!






そうなると最初に見つけたこの3つの候補は

全て違うということになる。

もう一度、別所線全体を見て

線路に対してこの角度に近い家を探してみる。





見つけた!


後ろに赤い屋根の家は…

ある!!

少し写真の色が薄いが間違いなく

赤い屋根の家はある!!!




しかし例の天窓屋根の家が無い?

う~ん…困った。

ここは違うのか?



で、ストリートビューで見てみる。

うわッ!!

間違いない!多分ここだ!



現在の写真でもやはり裏側には、例の天窓屋根の家が無い。

やはりココじゃあないのか??




いよいよ行き詰まる。。。



そんな折、吉川さんより新情報が!

同時進行で情報はお伝えしていたので、吉川さんより貴重な情報を頂く。


【1986年】航空写真

あれ?何やら屋根の上に黒い影が…

3つ見えるような…




そうなのである!

最初に見つけた写真で大屋根小屋根の家

思いこんでいた目標の家は

実は天窓屋根の家だったのだ!



年代別にみてみる。黄色枠内が天窓の家

(水色の線は基準線として)

黄色枠内にあった天窓の家は無くなって

ピンク枠内の大屋根小屋根の家だけが現存している。


ここでほぼ間違いなし。

そしてそして更に吉川さんより連絡が…


何とその天窓の家がそこにあったという決定的証拠が!


それがこちら!!

そうこの最初の別所線のシーンでの黄色囲みの中


アップ

黄色矢印が天窓位置、

手前には探していた大屋根小屋根の家も見えている。


位置的にはこんな感じ

点線は全て別所線外風景でのカメラ位置と目標物。

実線の黄色枠内が今回探していた建物。

何ということだろう。

探していたものは、ちゃんと本編に映っていたのだ!



何だか高羽さんに…

山田組にプレゼントをもらったような気分。



以上を元に最後は現地調査。

全体(黄色い矢印が大屋根小屋根の家)


近づいて…

踏切付近から

本編との比較




そしてそして最後の最後に大きなドラマが!


この写真を撮影し、家の前を通った時、何と偶然にもこの家の玄関が開き

中から住人の方が出てこられたのだ!




千載一遇のチャンス!




この日ご一緒させて頂いていた吉川さんが、すかさず住人の方にお声掛け。

貴重な証言をお話頂けたのである!!




・棟上げは昭和51年の秋頃で

お引越しは年末ギリギリであったこと。

よく見てみるとまだこの家には外壁が無い。

映画の上映開始は昭和51年12月なので撮影はその年の秋頃。

つまり、この家の建設中の頃に撮影があったという裏付け。




・現在の外壁などは色の塗り直し等で修繕している。

家の外観と映画のシーンとでは色合いが違っていることの裏付け。




・隣には天窓のある家があった。

これはダメ押し!もう決定的な証言。





住人のYさんに映画のシーンを見て頂く。

非常に感動され喜んで頂けた。


また、お別れ際に吉川さんのお持ちだった資料として使っていたお写真をご希望されたのでプレゼント。

とても良い記念になりました、と

これまた非常に喜んで頂けた。




約7秒のさくら丸窓車窓シーン



今回の調査でも多くのドラマがあった。

少しのシーンにこれ程多くの事が眠っていると思うと

今後も大いに期待値が上がる。



これだからロケ地巡りはやめられない。






まとめ


上田電鉄別所線にお乗りの際には、当サイトをちょっとだけ思い出しながら

車窓を眺めて頂くと「男はつらいよ」の世界にトリップできる事でしょう。

ほんのり味わってみてください。

 


解明!別所線風景

おしまい