この翌年の2020年から、駅前再開発工事着工となった。映画の頃の雰囲気を残す最後の年の柴又駅前
「さくら像」の台座に刻まれた山田洋次監督の言葉
ーーーーある別れ
さくらは失恋して旅に出る寅を駅まで
見送ることにする
「いいんだよ、忙しいんだろお前」と
言いながらもその思いやりが
みにしみるほど寅は傷ついていた
駅前でさくらは立ち止まる
「それじゃお兄ちゃん身体に気をつけてね」
「あゝ」と無造作にうなずいて駅舎に
向かう寅の足がふと止まりふり返る
「おい」
「なあに」
「満男に一生懸命勉強しろと言っとけよ」
「うん、わかった」
乱暴な口調で言いすててスタスタと
改札口に向かう寅
さくらは踵を返し、秋の終わりを思わせる
冷たい風が吹く中を家路につく
二〇一七年三月 山田洋次
「さくらの像」は今回の写真撮影の2年前、2017年3月に完成している。
お互い視線の先に立っていることがわかりますね。
そしてこの日一番の衝撃! 駅から少し離れた場所にある「かなん亭」がなんと閉店・・・。
第20作「〜寅次郎頑張れ!」で大竹しのぶさん演じる「さっちゃん」が働いていた「ふるさと亭」です。
また一つ、寅さんの時代が幕を下ろしました。(涙)
閉店のおしらせ
3月をもちまして「かなん亭」
は閉店させて頂きました。
43年間ありがとうござい
ました。
かなん亭店主
お店の左側の方に貼ってあった「閉店のお知らせ」
ここは吉川さんとも度々訪れていたお店なのです。
その後、解体作業が入った時の写真です。
この日は吉川さんと色々と柴又を巡りました。
まずは参道を歩き、帝釈天へ。
諏訪家の最初の戸建の家の位置を吉川さんと共に再確認。
その次は、な、なんと珍しいことにリニューアル後ということもありまして
吉川さんと共に「寅さん記念館」へ入場してきました。
出口手前、プロジェクターで壁一面に映し出す映像はとても良かったですよ!
そして「山田洋次ミュージアム」へ
山田洋次監督の歴史がギュッと詰まった展示館です。
小さな「寅さん像」発見! これ、いいですよね!欲しい・・・・
年末に「お帰り寅さん」が公開されるためそのお知らせのポスターも掲示されていました。
「男はつらいよ」50周年プロジェクトに寄せて
『男はつらいよ』シリーズは今から半世紀前に誕生した。その頃の日本経済は右肩上がりで
一生懸命働けば報われる、今に豊かな時代が来る、という実感の中で日本人の心は充実して
いた。「寅さん」はそんな時代の日本の民衆が求めていたキャラクターだった。真の幸福とは
何か、という考察を離れて物質的豊かさのみを目指す自分の姿の恥ずかしさを、笑い飛ばす
ことによって自ら慰め、安心する、それが寅さんシリーズの魅力だったのではないだろうか?
バブル崩壊を経て日本人の暮らしは低迷し不安な時代がおとずれる。1990年代後半からの
「生きづらい時代」の始まり。格差社会の「貧困化」、市民生活のすみずみにまで渡っての窮屈な
「管理化」。これがコンピューターの普及によって急速に進み、もはや寅さんが愛用した赤電話は
この国の風景から姿を消し、田舎の駅は無人化され、都市の駅の改札は自動化されて寅さんが
敬愛してやまない生真面目な鉄道員の姿は見えなくなり、寅さんが店をひろげる地方都市の
商店街はシャッター通り化してしまった。
今日、第1作のクランクインから50年を経たこの時代、この低迷と不安の時代に観客が
映画に求めるのは何か、その要求に、あの幸福だった70年代に生まれた寅さんはどう答えれば
いいのだろうか。それはきっと「なんとかなる、希望を捨てるな、生きていくんだ」という高い
位置からの激励の言葉ではなく「ヤレヤレ、こうやって俺たちは日々人生を生きているのさ」
という共感の笑い、苦笑、時として哄笑ではないだろうか。
今日のギシギシときしむ音がするような、悲鳴が聞こえるような管理社会に寅さんの生きる
余地はない。彼に必要なのは、この窮屈な世の中でなんとか生きていける「すき間」であろう。
ヤレヤレと安心してもぐりこめるような、ゆったりとした「すき間」を発見してやる、あるいは
ムリヤリ作り出してやることが、寅さんという厄介な男の存在のために必要なのだと思う。
山田洋次
喜劇ふたたび
家族というのは、厄介で、煩わしい。
つまらないことで対立してあくせく大騒ぎをする。
そんな滑稽で不完全な人間たちを見た観客が、
”あぁ、ダメなのは自分だけじゃないんだな”と笑いながら安心する。
観客と作り手が、笑いを共有し、映画館が、大きな笑いに包まれるー
そんな喜劇にしたいと思いました。
そしてそして最後は「寅さんカフェ」で吉川さんと歓談
注文したのはケーキとTORAチーノのセット
山田洋次監督、リリーさんこと浅丘ルリ子さん、三平ちゃんこと北山雅康さんなどのサインが入ったお皿です。
吉川さんの息子さんとも一緒にお茶しました。
夕方になり、光の感じも変わったので再び駅前に行ってみました。
何枚撮影しても飽きません。寅の兄貴のこの立ち姿はメチャクチャ「粋」です!
光の感じがお昼時とは違い、より一段と雰囲気が出ますね。
見送るさくら
彫刻家、景観デザイナー:吉田穂積さん制作
「さくら像」だけでなく、駅前の「寅さん像」や
「寅さん記念館」の入口上にある「寅さん像」や、
光庭にある赤御影石の帽子と鞄も吉田穂積さんの制作です。
「さくら像」は歯が見えてるんですね。
駅前の「寅さん像」はよくみると左足だけが光っています。
願掛けのために多くの方に触られているため左足だけ光っているのです。
理由は寅さん記念館の入口にある「寅さん像」が関係しています。
「寅さん像」の顔が、私的には気に入っています。
この風景は今はもう撮影できません。貴重だなーーと、しみじみ思います。
私の撮影風景 : 吉川さん撮影
私の撮影風景 : 吉川さん撮影
おしまい。