20260319

一線を画す、一線を越える


目が覚める。あまり眠れなかった。でもホテルのベッドはあまり寝れない方がいい。変に早朝に起きれた方が早めに行動を開始できるから。

今日は夜、新宿の紀伊國屋で予定があるから珍しく本屋めぐりをするとしよう!代官山蔦屋書店に着いた午前十時過ぎ。お客さんが少なくてよかった。二時間ぐらい。なんかもう少し奥行きがあってもいいような。

その後は今日、リニューアルオープンした三省堂書店神田神保町本店に。人が多い。多過ぎる。一階はすり鉢状に広がった空間で、展望台と呼ばれる小上がりが端の方にあったりと、挑戦的なレイアウトだった。空間美が魅力の図書館っぽさがあった。二階、三階も本棚の並べ方が独特で、従来的な街の本屋さんとは一線を画していた。その一線を画すことが必ずしも多くの人を喜ばせるというわけでもなく、ネットでは結構マイナスな声があった。神保町という街の性質もあるのだろう、欲しい本が必ずある安定したもう少しかための本屋が求められていたのかもしれない。池袋のジュンク堂や新宿の紀伊國屋、丸の内の丸善などとはまた毛並みの違う神保町の三省堂。出版業界、書店業界を鑑みれば、仕方がないのだけれど。蔦屋書店はその最たる例というか、本を置いておくからみんな来て買って、というやり方ではもうやっていけない。カフェと雑貨と空間とを提供して本を売っていくというスタイルを探求しなければならない。多くの人がそんなに真面目に本屋には来ないのだから。とはいえ私としては三省堂はある程度のかたさも保たれている印象を受けた。什器の色合いやデザインなどもそれほどお洒落お洒落感のあるものではなかった。あまりオシャレになりすぎないようにしているのだろうなと察される作りだった。開店したばかりだし、お客さんはキャパオーバーだし、またしばらく経って行ってみよう。三省堂では短歌のカードを買った。堀静香さんのカードを。

今日のメインイベントのために新宿へ。今日も堂々とそこにある紀伊国屋書店新宿本店。まだイベントまで四時間ある。一旦、売り場を見てまわる。しばらく経って、少々疲れてきたのでカフェにでも行こうかと、本を会計して店を出る。気づいたらカラオケに入っていた。一時間半、一人でカラオケに。『ヒゲとボイン』を歌うなどし、紀伊國屋に戻る。一人で新宿のカラオケに行けるようになりましたよお父さんお母さん。

今日のメインイベントは小原晩ちゃんと松本壮史さんのトークイベント。晩ちゃんは『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』で一気に有名になった作家で、松本さんは『サマーフィルムにのって』やいろんなCMをつくっている映像ディレクター。九階まで階段であがって、席に着く。晩ちゃんの本は全て買っているけど、持ってきてはいなかったから『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』をもう一冊買った。サインを書いてもらえるからね。しばらくして二人が出てくる。晩ちゃんだ!一時間と少しのトークイベントはあっという間に終わった。意外と笑ってたな私。そうしてサイン会になる。配られた付箋に自分の苗字を書いて本と一緒に晩ちゃんに差し出す。私の苗字は、珍しいとまでは言わないけど画数は多いし山田とか鈴木とかとは一線を画している。

「〇〇さん!」

と晩ちゃん。そこから苗字味や名前味について少しだけ話す。

「下の名前はなんですか?」

「△△です。

「あ、でも〇〇味もあるけど△△味もある気がする

と私の顔を見ながら言う晩ちゃん。

〇〇さんへ

私の苗字と晩ちゃんのサインが記された『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』。一階まで階段で降りて店を出る。少しだけキュンとしながら。新宿はもう真っ暗。なんだか騒がしい臭い怪しい。


何か残さなきゃ、と思いコンビニでメモ帳とボールペンを買って電車に乗る。間違えて逆方向に進む電車に乗って三十分ぐらいうとうとしてしまった。

トークイベントに行ったり、昨日のこともあったり、色々刺激的なこの二日間。しんどさもある。水中に潜るような時間でもあったけれど、そうしないと上手に泳げるようにはなれないから。この二日間を経て今抱いている焦燥感はあまり具体性がない。だからどの方向に一歩踏み出せばいいのかも曖昧。ただ確かなこととして、とにかく「恥ずかしい」を越えなければならない、ということ。トークイベントで“恥ずかしい”ということについての話題が出た。恥ずかしいって嫌なことだけど、越えるべきはそんな感情で、意識的に恥ずかしいにつっこんでいくべきな気がした。人生は楽な道と大変な道があったら大変な方を、みたいなことはよく言われる。私も自分を忙しい環境に置いたりするのは嫌いじゃない。それに加えて、恥ずかしくない道と恥ずかしい道があったら、恥ずかしい道を選ぶようにしてみようかな。小さい頃から恥ずかしがりで人見知りだけれど、それにしては目立ちたがりすぎる気もするけど、とりあえず恥ずかしさを欲するぐらい、っていうとなんか変だけど。あとは、理由を設定しない、ということもメモしていた。〜〜だからこうなりたい、とかじゃなくて、なるの。そう、なるの。


電車を乗り換えて無事にホテルに着いた二十三時過ぎ。たとえばこのまま大学を卒業して人並みに就職をしようとする人生を百回シュミレートしたら九十回は“成功”なのだろう。そうなるように高校三年の時に大学を選んだし。でもその九十/百でいいのだろうかとここにきて気づいてしまう。大学が楽しかったりいろんないい出会いがあれば抱かなかったであろうこの思い。百回やって十回ぐらい?いや一回かもしれないぐらいの人生の方が面白いんじゃないかな。人生が百回できるなら一旦今回は大学にも受かったから安定感のある道にしようかなと思えるかもしれないけど、多分一回だからね人生。あって二回。安定を選んだ反動に揺れ動いている私を包み込むこの白いベッド。心の揺れもスプリングに受け止められて眠る。


【今日、買った本。】

代官山蔦屋書店

・『就職しないで生きるには』(レイモンド・マンゴー/晶文社) 名著だからね。

・『WORK TREND REPORT』(コクヨ) クリエイティブだね。

・『誰か故郷を想はざる』(寺山修司/KADOKAWA) 寺山修司だね。

・『人間失格』(太宰治/筑摩書房) 友達が太宰を読み始めたらしいね。

・『ライ麦畑でつかまえて』(J.D.サリンジャー/白水社) 読まねばならん本というのがあってだな、


紀伊国屋書店新宿本店

・『指先からソーダ』(山崎ナオコーラ/河出書房新社) 冬のなんかさ、春のなんかね、杉咲花が読んでたからね。

・『無情の世界 ニッポニアニッポン 阿部和重初期代表作II』(阿部和重/講談社) Iは下北のヴィレヴァンで買ったよ。