20260124

永遠電車


1月25日午前6時11分。山手線外回り。有楽町に停車したところ。これを書いている。

彼らと解散して『選ばれざる国民』を聴いている電車の中。目の前には「慶應義塾志木」と刺繍されたリュックを持った野球部の人が座っている。ノートに何かを写している。宿題だろうか。間抜けなLINEのトーク画面が開かれたスマホを見ながら筆を進めている。


今日は中高時代の同級生、MとMと東京にて会った。苗字が両方Mだから下の名前のRとHとしておく。昨日、急遽決まったこの会は午後2時半に集合となった。Rとは1週間ぶり、Hとは2週間ぶり。スパンの短さは東京の喧騒に紛れて、やはり多少の特別感をもって彼らと合流した。ルノワールに行って駄弁る。2週間ほど前の成人式と同窓会でも多少話していたが、まだ話すことはあるみたいだった。特にHの日々は私よりもかなり騒がしくいろんなことが起こっている。まだ出てくるか、という感じで変なエピソードを電子タバコ片手に語る彼。クリームソーダと同じ緑色のおもちゃみたいな電子タバコ。甘いもわっとした息に乗って下品な話がウインナーコーヒーのクリームに不時着する。私はピザトーストの大きさに少し驚いていた。Rは相変わらず変にもの知りだった。私はピザトーストに満たされたお腹をさすりながら店を出る。Hがゲーセンに行きたいと言ったのでぶらぶらして探す。夕方、街は汚れる準備をしているかのように吹き抜ける風を懐に含ませはじめる。メイドカフェやコンセプトカフェの客引きの人にチラシをもらうH。チラシの裏の直筆と思われるメッセージに興奮している。どうせおじさんが書いてるよ、と釘を刺す私とR。それでも嬉しそうだった。

ゲーセンに入ってパンチングマシーンをしてみる。ちゃっちいグローブに挿し込んだ手。拳を握るが爪を痛めそうで恐る恐る殴る。空手をやっていたRが1番強かった。よかった友達で。味方で。太鼓の達人をHとする。私が下手なのかな?それともHがうまいの?私もリズム感はある方だと思っていたけど、あまりにも彼の方がうまかった。練習してたのだろうか、マイバチを持って。そういえば兄もマイバチを持っていたな、なんなんだ。なにに本気になっているのか。そのあとはマリオカートを3人でやった。1レース目は私、2レース目はRが勝った。リズム感とドライビング技術、神は二物を与えない。日も沈みそろそろ居酒屋にでも行こうかとなる。私はピザトーストにまだお腹の7割を満たされていた。

もう空が明るい。『能動的3分間』が流れている。まだ電車に乗っている。

1軒目の居酒屋。RとHは瓶のビールを。赤い星が描かれたそのビールを私がコップに注ぐ。私はもちろんコーラである。厚揚げ豆腐を食べたり、餃子を食べたり、コーラを飲みリンゴジュースを飲み。そうそう。お酒は飲んじゃダメ。少し顔を赤らめた2人とシラフの私。彼らが5杯ほど飲んで店を出る。2軒目へ。私には意味がわからないが、今日は少数派だ。黙ってついていく。今度はカルピスを飲む。イカの刺身を久しぶりに食べた。おいしい。さっきの店より酒が濃いと言いながらレモンサワーを飲む彼。えへへ、と笑っている。楽しそうだ。まだHのエピソードは枯れそうにない。フライドポテトを貪る私。シラフだけれど普段から他人よりはふざけて生きているから大丈夫。というかラリってる。すこしふらふらしたRとちょうど良さそうなHと店を出る。シャバの空気、東京の冷たさ、3軒目は細い道の先に。

小綺麗な居酒屋に。カルピスは頼むのだが、メニューにあったカルーアミルクに目が止まる。頼んでみる。と言っても私が1杯飲むわけではなくて、Hが飲むのを少しもらう程度ということで。カルーアミルク、飲みやすい!岡村靖幸の『カルアミルク』。何度も耳にしてきたそのお酒の味を知ることができた。こりゃバーボンソーダよりおいしい。バーボンソーダも飲んだことないけど。3口ぐらい飲んだ。特になにも体は反応を示さなかった。セーフ。Rが実家で飼っていた犬の話になる。今年の1月8日に亡くなってしまった。しんみりとした空気の中でRは改めてその事実に少々気を落としHはそれをほんのりとフォローしていた。何のために生きているのか、生きていくのか。そんな問いへの答えを1つ失ったR。どのぐらい酔っていたのかはわからないが、茫然とした表情でレモンサワーのレモンを絞っていた。3軒目で日が変わる。全員若干、ぐったりしている。26時過ぎ、店を出る。「クラブ行く?」というR。「それだけは…」と断る私。ごめんなさい。それだけは…

カラオケに行く。叫ぶ。発狂。酒が回って気持ち悪くなるRはソファに横になって。汗をかきながらマイクを握る。止まらない音は部屋の中で乱反射して光より速くなる。回復したRも叫ぶ。頭を振りながら朝が来る。探せ探せ探せ探せ。

冷たい緑色の電車に乗り込む。

そうして私はまだ電車に乗っている。