20260223
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短い眠りから覚める。震え続けるスマートフォンが机から落ちて、その音で目が覚める。予定よりも30分ほど寝坊。急いで支度をして家を出る。間に合わないのだ。TOHOシネマズ日比谷に向かう電車の中、眠さと空腹とでぼんやりする。町田康の小説を持ってきたが、読む気にはならなかった。慌ただしく電車を乗り換えるなどしている間にも、春の訪れを感じる。ジャンパーを着てきたことを後悔する。そういえば昨日の帰りも手をポケットに入れる必要がなかった。もう来ているのだ、春。なんとか無事に辿り着いた、昨年末ぶりの東京ミッドタウン日比谷。前回は『リリイ・シュシュのすべて』、そうして今回は『花とアリス』。
冒頭からこれまで聴き倒してきたサントラの曲が流れる。劇場の大スクリーンでこの映画を観るのは初めてだから、“本物”を感じる。そうしてやはり映像がとても美しい。白い息を吐きながら駅のホームに立つ、花とアリス。それだけでもうすばらしいのだ。言うことはないのである。やっぱりアリスと父親のシーンが好きだ。「ウヲアイニ」。教えてくれてありがとう。そのシーンで流れる『ウヲアイニ・アラベスク』。雨の中でレインコートを着てアリスが踊ってるシーンも、鉄腕アトムが浮かんでるあのシーンも、花が舞台袖で泣いているシーンも、アリスが制服で踊っているシーンも。私にとってそのどれもがこの映画を象徴していて、1本の映画に1つあればいいようなそんな強く心に残るシーンが2時間と少しの間にいくつもある。これからもきっとサントラを聴くだろうし、映画も繰り返し観るだろう。劇場を出て街を眺めれば、歩いている人たちがみんな演技しているように見えてくる。不思議なほど青い空。ひらきはじめた春の匂い。この世界は美しい、のかもしれない。そんなことを考えながら歩く。これからも、1番好きな映画を問われれば、『花とアリス』と私は答える。
渋谷に移動して青山ブックセンターへ。いつも通り宮益坂を登り、青山通りへ。道中、既視感のある建物が目に入る。カニバブルだ!ダウ90000の事務所である。既視感があったのは、蓮見さんの岸田國士戯曲賞受賞のお祝いの花が置かれているその建物の写真がXに投稿されていたからだ。その空きテナントみたいな空間。カニバブルのロゴが描かれた看板も付いていた。いいもんをみっけた気分。https://x.com/Show0408S/status/2025039404960793042?s=20
青山ブックセンター。良さげな本のタイトルをメモっていく。本屋を「見てまわる」というのに料金を取られないことが不思議なほどだ。今日は3冊買ったのだけど、20冊ぐらい買ったような気分なのだ。LINEのKeepメモに溜まっていく書名。熱くて脱いだジャンパーを片腕に持っておかないといけないのが若干面倒だったが、それでも楽しいほどにこの本屋は楽しい。エッセイコーナーを見ていると、5歳ぐらいの女の子が棚を見ながら「ここはフェミニズム。」と言っていた。「そうだね。」と心の中で返す。フェミ、という語感が心地よいのだろうか。文庫のコーナーでは、そういえばここで金原ひとみの『AMEBIC』を買ったなあと思い出す。会計をしにレジの方に行くと、若いカップルの彼女の方が自己啓発書のコーナーを指差しながら「こういうの読んでる奴がいちばんつまんないわ」と吐き捨ていた。どのタイトルを指差していたのかはわからなかったが、なんかよかった。でも、現実としては自己啓発書は書店にとってかなり重要なジャンルである。社会の中で人々は皆、つまらなくなっていくのだ。彼女にも道に迷って自己啓発書に縋る、そんな日が訪れるかもしれないし。私なんて特に就活を控えている大学生だ。『夢をかなえるゾウ』を一旦買っておこうか。
今日の収穫はメモったタイトル80冊、お金を出して購入した3冊といったところ。
1冊目は島口大樹さんの『オン・ザ・プラネット』(講談社)。もともと『ソロエコー』が気になっていたからこの人の存在は知っていた。帯に「ロード&ムービー・ノベル」と紹介されている。カバーデザインも素敵。
2冊目は中村暁野さんの『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)。装丁が素敵で手に取って、帯を見てみたら奥山由之と平野紗季子が帯文を書いていた。そのあざとさにKO。
3冊目は横尾忠則の『言葉を離れる』(講談社)。こういうエネルギー量の高い本が欲しかった。ほら、自己啓発書もそう遠くないでしょ。
紙袋に3冊、Keepメモに80冊ぶち込んで店を出る。ありがとう青山ブックセンター。渋谷駅に戻る時にカニバブルの建物の写真を撮った。やっぱり空きテナントみたいだった。
青山ブックセンターには2時間ぐらいいた。SPBSなどにも行くのもありだったが、疲れていたので帰ることに。帰りの電車で、赤ちゃんが泣いていた。それはそれは激しく。誇張し過ぎた赤ちゃん、ぐらいに。赤ちゃんの泣き叫ぶ声がイヤホンの音楽越しにも微かに聞こえた。ここまで本気で泣いているのはおもしろいな、と思って音楽を止めてイヤホンを片耳外した。すると向かいの席に座っていた女性もワイヤレスイヤホンを外した。時々赤ちゃんの方を見ながら微笑んでいた。あそこまで泣けば誰もうるさいとは思わない。泣くなら泣く。泣かないなら泣かない。はっきり。
今日は私がテレビに出ていた。友人がテレビ画面を撮った動画を送ってきた。それだけ。