小倉百人一首より
これやこの ゆくも
かへるも わかれつゝ
しるやしらぬも
おうさかのせき
藤原定家自筆
蝉丸
これやこの 行くも帰るも分かれつつ
知るも知らぬも逢坂の関
古今和歌集巻第八
別歌
だいしらず 在原ゆきひら朝臣
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる
まつとしきかは いまかへりこむ
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む
すみのえ(衣)の きしによるなみ 夜さへや
ゆめのかよゐじ 人めよくらん
伝小野東風筆
藤原敏行朝臣
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
いまこむと いひしはかりに ながつきの
ありあけのつきを まちいつるかな
素性法師
今来むと 云ひしばかりに 長月の
有明の月を 待出るかな
心あてに おらばやおらん はつしもの
おきまどわせる しらきくのはな
伝藤原公任筆
凡河内躬恒
心あてに折らばや折らむ 初霜の
置き惑わせる 白菊の花
なつのよは またよひな
からあけに けり
くものいつこ に月かく るらん
古今集 伝小野東風筆
藤原深養父
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
百しきや ふる
き のきはの忍にも
猶あまりある
むかしなりける
藤原定家自筆
順徳天皇
百敷や 古き軒端のしのぶにも
なおあまりある 昔なりけり
百敷 :宮中