瀟湘八景和歌

瀟湘八景

11世紀後半、北宋の士大夫宋迪が湖南省に勤務していた時、洞庭湖始め付近の風光明媚を山水画にした事から瀟湘八景と呼ばれるようになった。 夜雨、暮雪、晴嵐、晩鐘、落雁、夕照、秋月、帰帆 の八つをテーマとして日本でも絵や和歌が作られ、近江八景、金沢八景、水戸八景などがある。 教材で取上げたものは天保時代から南町奉行所与力仁杉家が所持していた雛道具の一部である巻物に書かれている和歌。 巻物は縦5.4cm、長さ65cmの小さなものでその中に下の様な和歌が書いてある。

出典:佐野美術館

瀟湘夜雨

船よする 浪にこゑまき よの雨を

とまよりくゞる しつくにそしる

遠浦帰帆

かせむかふ 雲のうきたつ 空を見て

つりせぬさきに かへる舟人

江天暮雪

あしの葉に かゝれる雪も ふかきえの

汀の色は ゆふへくもなし

山市晴嵐

松たかき さとよりうへの みねはれて

あらしに しつむ 山もとの雲

遠(煙)寺晩鐘

暮かゝる 霧よりつとふ かねの音(ね)に

遠(おち)かた人も 道いそくかな

漁村夕照

浪の色は 入日のあとに なお見えて

いそきは(磯際)くらき 木かくれ宿

平沙落雁

まつ(先)あさる(漁る) 芦辺の友に さそわれて

空行かりも またくたる(下る)なり

洞逓(庭)秋月

あきにすむ(澄む) 水すさましき さよ(小夜)ふけて

月をひたせる 興津しら浪

仁杉氏の需

蓬月書之

読下し: 仁杉氏の需(もとめ)に応じて蓬月これを書く

註;

仁杉氏 江戸南町奉行与力仁杉八右衛門(尾張藩顧問)

蓬月 尾張藩家老竹腰兵部少輔正富の号

書体 定家(藤原定家)流

和歌 冷泉為相(ためすけ)(1263-1328)作

竹腰兵部少輔正富

正筆也

古筆了伴

註 古筆了伴(ー1853、64歳)江戸の鑑定家