江戸料理

江戸料理を味わう

古文書教材で江戸料理の書を今読んでいるが、 江戸料理を実際に味わう為、会員十七名で桜の咲き始めた鎌倉に出かけた。

八百善と云う店で創業は江戸時代中期。 文政年間には徳川将軍も訪れ江戸で最も有名な料亭で、明治になってからも顕官、文人が多数おとずれた。 ここの十代目当主栗山善四郎氏が東京都内の店をたたみ、三年前に鎌倉明王院境内に割烹店を開く。 大料亭化、利益重視を嫌う十代目が独特の哲学で茶の湯の様に、亭主と客という関係で江戸の伝統料理を振舞う。 六人掛けの テーブルが四つで、独りの客でも一つのテーブルと云う事なので一日4組以上は入らず、昼食だけで回転もないので予約なしには先ず入れない。 器や軸などは 江戸時代の最盛期に揃えた名品を今に伝えている。 料理よし、調度品よし、咄よし。 花見客で賑わう八幡宮界隈から離れた閑静な鎌倉を見た。

1.向付(むこうづけ)

旬の魚を使ったお造り

(刺身) この日はぶりの切り身が 三切れ。 素材のうまみを引き出す味付けはすばらしい。ぶりも養殖ではなく太平洋産の由

2.お椀

この日はアナゴの吸物

何とも云えぬ良い塩加減

久里浜のアナゴとの事

4.焼物

季節の魚の焼物

この日は鰆(さわら)のきみこ焼

鰆は正方形に切ってあるのが特長。

器は遠州織部との事

6.煮物

この日は地鶏の煮物で4時間煮込む由。

柔らかく、鳥臭くなく鳥が苦手の筆者も食べられた。

器は九谷焼

8.食事

季節の炊き込みご飯と香の物。 この日は庭に生えたふきの炊き込み。 江戸料理の特長は食べられないもの(目で楽しむ様なもの)は出さない由。 器に何も残らないのが原則。

9. 甘味

この日は干し柿と薄茶

干し柿の写真は取り損なったが、干し柿を二つに割り、中に詰め物があった

全9品コースで6,500円。

3,000円のコースもあり、 3二の向付と 4焼物がない由

コース外 酒

燗鍋と云う入れ物に入っている。 冷酒で鎌倉の地酒との事。 女性会員に大人気で皆さん随分飲んだ様だ。 この鍋も名品の由。 盃は織部盃(平盃)

3. 二の向付

この日は三つ葉とアサリ

の和え物

おぜん(折敷)は最初から出ているが名品の由。 禿げた様な色はわざと作る模様との事

5.中皿(なかざら) 揚げ物

キスと海老とししとうのかき揚げ で上に大根おろし。

この器は満州国皇帝溥儀の饗応の時八百善が作らせた由。 黄色の五爪の龍の模様がある

7.小付(こづけ)

蒸し物

鱸(すずき)の茶碗蒸し

香の物

漬物は決して市販のものでなく、八百善特製のもの。

かぶの薄切りと大根のはりはり。 テーブルに一つを銘々でご飯の蓋に取り分ける

江戸料理の真髄を語る八百善十代目善四郎さん。

料理の説明はもちろん、器の由来、語り継がれた八百善を訪れた近世、近現代の要人や文人達の咄が聞けて3時間余が瞬く間に過ぎた。