歯磨香

江戸の広告

江戸時代の広告宣伝は、ちらし、冊子、歌舞伎の演目の合間に口上で行うものなどがある。

爰に取上げたのは歯磨香の宣伝を役者が口上で述べている。

はみがき口上

夜番人吉六 市川団十郎 応需

女房おつな 岩井紫若 豊国画

狂言なかば、おじやま

おしかりをも、かへり見ず

これより口上をもつて 江戸香 牛込川田ケ久保町

申上奉りまス、まづハ 広到香 御はみがき

当芝居御ひいきと 窪盈堂 万屋治助 (あえい堂)

ござりまして、早朝より

かやうに御賑々しく

御見物に御来駕なし被下

ますル段、座元羽左衛門儀ハ

申上るに及ばず、惣座中

別てハかづなりましぬ、われわれ共に

いたりますル迄いかばかりか有がたい仕合に奉存まする、

別て御ひろう仕りますルハ、此度私よんどころなう

相たのまれましたる、紅入江戸香

紅ぬき広到香、右のはみがき、見せうり仕りまするハ、牛込

川田が久保町万屋治助方にて、製方仕りますル、其外

御江戸町々所々取次見せござりまして、右のかんばんを

かけ置御ひろう仕りますル間、御目印とあそばされ御求め

遊バされますル様

ひとへにこひねがひ奉りますル、はみがきこうのうの義ハ

外々の品と御つかひくらべ、御けんりよに相かなひ候ハヽ、

御評判よろしく御ふぃちゃうなし下され、ながくあきなひ

繁昌仕候やう、ひとへにこひねがい奉りますル

まづハはみがき御ひろめの口上旦ハ当芝居かほ見せの御礼

かれこれとりまぜましたる口上、おそれながらすみから

すミまてさやうに御聞被下ませう