寛政皇都鑑秘録

寛政皇都鑑秘録

江戸時代後期寛政年間に尊号一件という実際に起きた事件を基に幕府と朝廷の綱引きを小説化したものである。 写本が色々流布したもののひとつであり、本資料は秋田と山形の境目の地方の旧家に残る写本。 史実では交渉過程は不明なものの幕府側が朝廷を押さえ込んだと云うのが通説であるが、小説では一公家の大活躍で幕府を押さえ込んだ事になっている。

事件の発端は後桃園天皇に皇子がなく、閑院宮親王の子が養子となり光格天皇が成立した。 光格天皇が実の父親の閑院宮の身分が摂関家より下である事を歎き、太上天皇の称号を贈りたくおもった事が発端。 結果として幕府は前例が無いと拒否し、交渉役の公家達を処罰したと言われている。

小説では江戸時代初期の元和・寛永年間(1620年代)の朝幕関係の物語を伏線として冒頭に置き、後期の寛政年間(1790年頃)の尊号一件に飛ぶ。 本写本は嘉永二年(1849)であるから小説は事件後比較的早い時期に成立している。

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