詔 書(討幕の密勅)
左近衛権中将 源 久光
左近衛権小将 源 茂久
詔す 源慶喜、累世の威を籍(か)り、闔族(こうぞく)の強を侍(たの)みて、妄りに忠良を賊害し、数(しばしば)
王命を棄絶し、遂に
先帝の詔(みことのリ)を矯(ためて)懼れず、萬民を溝壑(こうがく)に擠(おと)して顧みず、罪悪至る所、
神州将(まさ)に傾覆せんとす。朕、今民の父母為(た)り、是れ賊を討たずして、何を以て上は
先帝の霊に謝し、下は萬民の深讎(しんしゅう)に報(むく)いん哉(や)。此れ朕の憂憤在る所、諒闇(りょうあん)にして顧みざるは、萬已(や)むを得ざるなり。汝、宜しく朕の心を體すべく、賊臣慶喜を殄戮(てんりく)し、以て速やかに回天の偉勲を奏し、而して生霊を山嶽の安きに措(お)くべし。此れ朕の願いなり。敢えて或懈(わくかい)するなかれ。
奉
慶応三年十月十三日
正二位 藤原忠能
正二位 藤原実愛
権中納言 藤原経之