文久二年 将軍家茂上洛の「御意」
浦日記
[解読文] 中井 静雄(土曜古文書の会・東京都町田市)
[読み下し] 長洲 寂石
文久二年六月朔日(ついたち)
列藩へ御意
近来、容易ならざる時勢に付き、今度政事向き格別に全て変革候間、何れも国家の為、厚く相心得心付き候義は申し聞く可く、猶年寄り共談申す可く候
今日上意の趣、誠に以て厚く思召し、国家の御慶事此の上無く有り難き事に候、昇(承)平(しょうへい)、殆んど三百年、其の流れ綱紀も幣し相弛み、武備御行き屈きに相成り兼候折柄、近来外国の事務頻りに差し添いに相成り、右御取扱い振りより自然天下の物情に差し響き、終に叡慮を悩ませ奉り候に至り、深く恐れ入り思召され候
素より公武の御間柄、聊(いささか)も御隔意在らさせられ侯御事には之無く候得共、何となく御情実御通微に相成り兼候故よりの訳に付き、速やかに御上洛、万端御直に仰せ上げられ度との思召しにて、則ち御内々仰せ出されに相成り候