ますらをの つくしたあとは つきつきに 事あきらけく なりにけるらむ 美鶴
山縣大貳 傳
不肖孫 今村 亮 撰
王父大貳事跡、諸書載る所、各、異動有り、微に足らざる、独り旧幕府裁判書、水戸家日記、亮、幼時家君に聞く所と符節合わせるが如く、今、参互考訂、略其の実を得たるかな。嗚呼、王父明和の初めに方り、天下の為めに大義を植へ、名分を正さんと欲す、而して出でる、其の時、事件其の世許さず、素志を遂げ得ず竟に非命に終る、悲夫、幸に明治聖代に遇(至)り、宿冤を雪ぎ得ざるを、辱けなくも祭祀の典を賜り、泉下の喜び想うべく、之れ子孫の為め、亦與かるに餘栄有り、今其の事実を録し、之を後代に遺さず、則ち祭祀を奉り朝旨の道に答える所以に非ざる也、乃ち蕪辞を顧みず、一に実事を以て主の為にこの傳を作りたり