『真木和泉守遺文』(「顕彰会」蔵収)
真木和泉守著『五事建策』
文久三年六月十六日
一 攘夷の権を攬(と)る事
深遠測るべからざるを以て彼怖る。その文大意
大樹侯数百年の廃典を興し、上洛致され、万事恭順、君臣の名義を正され候処へ、深く叡感候処、去る九日御暇仰せ付けられ大坂表へ趣かれ候已前、奏聞致され候件々、始末不分明、殊に蒸汽船にて遽(すみやか)に帰府、第一攘夷の期限等の処に於いて、不都合の儀一にあらず候間、急度御糺しもこれあるべく候へども深く思し召され候儀これあり、追て仰せ渡らせらるべく候。この旨申し入れべく御沙汰候事。
勅使赤間関に遣わす。未だ及ばざるの藩国に布告す。五月六日御布告の文に添えて
攘夷期限の儀、国主并(ならび)に御手続きこれある面々は、御直に布告相成り候え共、小藩并に御手続きこれなき面々には、幕府へ布告の儀仰せ渡され候。然る処その儀不行届きの由にも相聞え候間、方面の大藩へ仰せ付けられ、小藩并に土地を擁し候者には、一般に布告致すべき段仰せ出され候。この旨相辮(わきま)え、遅滞なく申し伝えらるべく候事。