明治維新の「本質」は何であったのかを明らかにすること、換言すれば、幕末維新史の「定義づけ」をおこなうことが、本論の目的である。
明治維新史に関する史料収集やその研究と史的記述は、倒幕派の雄藩を首班とする明治政府や旧幕府派の指導層の手によって、維新政権確立直後からとりくまれた。その後、昭和期に入ってから今日に至るまで、大学などの公的機関の研究者や民間の研究者によって旺盛な研究がとりくまれ、明治維新史研究は数多くの成果を残してきた。
明治維新の「本質」論を論述するにあたって、「先行研究」との関連づけの要請から、いわゆる「社会科学的」研究の成果に注目したい。社会科学的研究の成果は歴史学における一つの歴史観としての権威を確立しており、その社会的影響力は大きく、維新史を研究する者として必須の研究対象である。
したがって、本論ではこの社会科学的研究の成果に基づき、その検証を通して維新史の「本質」論を展開していくことになる。
そこで、まず、社会科学的研究の成果について三人の研究者の成果を参考にして、その維新史の各歴史事象の「定義づけ」における特徴的な論点を明示し、その検証を通して自論としての幕末維新史の「本質」論を展開したい。