演説
私儀先達て加判役へ転役仰せ付けられ有り難き仕合せに存じ奉り候、然る処是迄重職引き続き数度の攘い役彼是れ拾余年の所勤に付き、漸々内証疲弊に及び当節に至り候ては難渋相迫り御役取り続けむずかしく、其の上近来別けて老衰に及び、時々持病差し発り所勤も相調え難く儀に御座候、節角御心入れを以て召し仕えられ重畳有り難き仕合せに存じ奉り候、然る処間も無く、かようの御願い申出候段、甚だ以て恐れ入り奉り候得共、別断の仕合せに御座候間、何卒御心入れを以て御役御免なされ下され候様存じ奉り候、左候はば、緩々保養致し内証仕り組立て致し往々御奉公の覚悟仕り度存じ奉り候間、何分然るべく仰せ上げられ御聞き済みなされ下され候はば、表方書付差出し度存じ奉り候、此の段宜しく御取り計らい下され候様願い奉り候、以上
八月 浦 靭負