[序論]
謹んで按ずるに、神州は太陽の出づる所、元氣の始まる所、天日の嗣、世ゝ宸極に御し、終古易らず。固より大地の元首にして、萬國の綱紀なり。誠に宜しく宇内に照臨し、皇化の曁ぶ所遠邇あること無かるべし。而るに今西荒の蛮夷は脛足の賎を以て四海に奔徒し、諸國を蹂躙し、眇視跛履、敢て上國を凌駕せんと欲す。何ぞ其れ驕れるや。
地の天中に在る、渾然端なく、宜しく方隈なきが如くなるべし。然れども凡そ物には自然の形態ありて存せざるなし。而して、神州は其の首に居る。故に幅員甚だ広大ならず。而して其の萬方に君臨する所以は、未だ嘗て一たびも姓を易え位を革めざればなり。西洋の諸蕃は、其の股脛に當る。故に舶を奔せ舸を走せ、遠しとして至らざるなきなり。而して海中の地、西夷の名づけて亜墨利加州と曰ふものに至りては、則ち其の背後なり。其の民愚戇(ぐとう)にして、為す所ある能はざるなり。是れ皆自然の形態なり。