「顔」の印象が科学記事への関心に影響:科学記事に載せるプロフィール写真は「知的」で「誠実」な感じに!

投稿日: Jul 04, 2017 1:51:50 AM

近年,サイエンス・コミュニケーションというものが注目されています。これは,科学的なトピックをわかりやすく伝えることで,一般市民への科学への関心を高めることを狙ったもので,国が推進する方針の1つでもあります。インターネットの普及によって,ネットニュースなどで,手軽にわかりやすく研究を要約した科学記事を目にすることができます。今回は,こうした科学記事に関心を持ってもらえるかどうか,またその研究をどう評価するかが,研究の内容のみならず,科学者のルックスも影響しているということを示した研究を紹介します。

ルックスの影響はさまざま

ルックスは,さまざまなシチュエーションで社会的な判断に影響を及ぼす(たとえば,選挙で候補者の顔の魅力が影響すること)ことが示されています。本研究では,科学者のルックスが一般市民の科学的コミュニケーションに及ぼす影響について検討しています。

どういうルックスの特性が関心や良い研究者だという評価と関連するのか?

まず,研究1と2では,科学者として興味・関心を生じさせる特性について検討し,それらが質の高い研究を行う「good scientist」であると印象づけるかを検討しました。手続きとしては,物理学者や生物学者の顔画像を見せ,その人の印象(有能さ,社交性,道徳性),魅力,その人への関心,科学者として優れているかどうか(「good scientist」)を判断させました。その結果,有能さ(有能さ,知的さ,など)や道徳性(信頼できる,誠実さ,など)が高いと判断された研究者の顔画像は,その人に対する関心や「good scientist」であるという判断の両方に正の効果を持っていました。一方で,魅力は関心を高めるが,「good scientist」かどうかという判断では,魅力が高いほど低くなることが示されました(Figure 1)。

ルックスが良いとその記事が選択されやすくなるのか,記事の評価がよくなるのか?

次に,研究3と4では,科学者の顔画像と一緒に実際の科学記事を提示し,どの科学記事を読みたいかを選ばせる実験を行いました。その結果,研究1や2で関心を引く顔と判断された科学者の科学記事のほうが,選択されやすいことが明らかになりました。特に,この効果はビデオでの記事紹介の場合に顕著でした。

最後に,研究5と6では,科学者の顔と同時に提示した科学記事の「質」について判断をさせました。その結果,研究1や2で関心を引くと判断された顔の科学者のほうが,それと同時に提示された記事の質がより高いと判断されました。

感想

こうした科学者の見た目によるバイアスによって,科学記事に内容の評価がおろそかにされてしまう可能性もあるかもしれませんが,まず関心を持ってもらえるかどうかという点では,一般市民への科学記事に載せるプロフィール写真を「知的」で「誠実」な感じにするのは有効かもしれません。