直感の処理は,本当に【非意識的】で【感情的】で【早い】ことが判明

投稿日: Apr 14, 2016 8:6:34 AM

実験の結果,intactが提示された場合のほうが,scrambledが提示された場合よりも,ランダムドット課題の成績が良く(研究1から4),さらに判断にかかるまでの時間も早く(研究2),確信度も高かった(研究2)。これは予測を支持する結果で,直感には【非意識的】【感情的】【早い】という3つの特徴があることを示している。さらに研究4では,非意識的な処理が行われた場合に活性する,皮膚コンダクタンス反応(SCR)も測定して同じ課題を行った。その結果,intactのほうがscrambledよりも反応が大きくなっていたことが示され,【非意識的】な処理が行われているという,さらなる証拠を得た。また,研究2から4のデータをベースにした非意識的な判断材料の蓄積が意識的な意思決定に影響するというモデルをもとに,コンピュータシミュレーションを行った。判断材料となる非意識的な情動情報がintactのほうがscrambledよりも早く蓄積され,これがランダムドット課題の成績に影響していることが明らかになった。

直感の【非意識的】【感情的】【早い】という3つの特徴を,行動指標と心理指標でおさえるのみならず,生理指標やシミュレーションといったあらゆる測定手法を用いて検討したのがこの研究の面白いところであろう。今後の展開の1つとして,神経科学的な手法を用いて,直感の【非意識的】【感情的】【早い】という特徴に関するさらなる証拠をおさえていくそうだ。

【引用文献】 Lufityanto, Donkin, & Pearson (2016). Measuring Intuition: Nonconscious Emotional Information Boosts Decision Accuracy and Confidence. Psychological Science.

【直感】で何かを選んだり,物事を決定したりすることは,日常的によくあると思います。研究者に限らず多くの人が,【直感】には【非意識的(無意識的)】【感情的】【早い】という特徴があるという説明に納得するのではないでしょうか。しかし,直感が本当にこのような特徴を持っているのかを証明した研究は,ほとんど見当たらないそうです。今回は,そんな直感の【非意識的】【感情的】【早い】という3つの特徴が本当に存在するのかを検討した,Lufityanto, Donkin, & Pearson (2016)のMeasuring Intuition: Nonconscious Emotional Information Boosts Decision Accuracy and Confidenceという論文を紹介します。

Lufityantoら(2016)は,ランダムドット課題を用いた4つの実験で,直感が本当に【非意識的】【感情的】【早い】のかを検討しています(Figure 1参照)。ランダムドット課題とは,たくさんの点がどの方向に動いているかを判断する課題です。この研究では,【非意識的】で【感情的】な情報がランダムドット課題の成績にどれだけ影響するかを検討するために,ランダムドットと同時に連続フラッシュ抑制(CFS; continuous flash suppression)を使って,非意識的に情動的画像を提示しています(Figure 1の例だと,ネガティブ情動画像として右視野にヘビの画像を提示している)。つまり,実験参加者は,ランダムドットと画像が同時に提示された時に,ランダムドットがどの方向に動いているのかをできる限り早く判断をします(研究1~4まで共通)。さらに,研究2から4では,参加者にその判断にどれだけ自信があるかを「1・ほとんどない」から「4・非常にある」から1つ選択させています。ここまでの一連の流れを144×3回行いました。

ただし,本当に【感情的】であるかを明らかにするために,ランダムドットと同時に提示される情動的画像を2種類用意した。1つはなにも加工していないそのままの状態の画像(以降,intactと表記)で,その画像を見るとポジティブあるいはネガティブな感情が喚起される。もう1つは,画像の輪郭などの成分のみを保持したまま,その情報をごちゃまぜにすることによって,元々どんな画像であったのかをわからない状態にした位相スクランブル画像(以降,scrambledと表記)で,画像を見ても感情は喚起されないという。,この時,intactが提示されたときのほうが,scrambledが提示されたときよりも,ランダムドット課題の成績が良くなれば,直感が本当に直感的な処理が本当に【非意識的】で【感情的】であるという特徴が確認され,さらにintactがscrambledよりも反応時間が短ければ【早い】という特徴があることがわかる。