「みんなで食べる方がおいしい」というのは,他人じゃなくても良い

投稿日: Sep 08, 2017 8:53:33 AM

Nakata, R., & Kawai, N. (2017). The “social” facilitation of eating without the presence of others: Self-reflection on eating makes food taste better and people eat more. Physiology & Behavior, 179, 23-29.

1人で食事をとるよりも,みんなで一緒に食事をする方が,よりおいしく,食が進みますよね。

このような食の社会的促進が生じる理由はいくつかあります(たとえば,他者と一緒に食べることによる「ポジティブなムード」によって生じる)。しかし,共通の見解として「一緒に食事をする他者の存在」が必要という前提があります。

この研究では,目の前に他者が存在しなくても,同様に社会的促進が生じることを示しています。

手続きとしては,参加者(高齢者)は,鏡の前(ポップコーンを食べる参加者自身の姿が見える状態),もしくは,壁を映したモニターの前で一人でポップコーン食べるように指示され,その時の食べた量とおいしさを測定しました。

その結果,鏡で自分自身の姿が映った条件の方がモニター条件よりも,ポップコーンを食べる量が多く,さらにポップコーンに対する評価が高いことが示されました( Figure 1 )。

そして,若者が参加した実験でも同様の結果が得られました。さらに,同様の食の社会的促進が,参加者自身が食事をしている静止画を前に置いた時にも生じました。

これは,食の社会的促進が生じるのに,「誰かが食べている」という静的な視覚的情報だけで十分であることを示しています。

※誰かと一緒に食べることが「ポジティブムード」を喚起するとよく言われていますが,3つの研究を通して,参加者自分が食事する姿によってのポジティブムードが生じなかったことから,「ポジティブムード」が食の社会的促進に必ずしも関与しているということもなさそうです。

個人的な感想

日本の孤食の問題を考えると,この研究の結果は「鏡を置く」という簡単な方法で解決ができるという点で,とても社会的な意義が大きくて面白い研究だと思いました。ただ今回の研究の結果について,摂取量が増えていることには変わりはないですが,みんなと食べることの効果とは別のメカニズムによって生じた可能性が高いように感じました。というのも,一種の「目の効果」のように,鏡や自分の写真が自身をモニタリングするようにして「実験室でポップコーンを食べてください」と教示に従った行動が増えたのではないかとも思います。今後の展開が楽しみです。