【攻めタイプ】と【用心タイプ】 どっちの振る舞いのほうが説得的?

投稿日: Apr 20, 2016 1:35:53 AM

Cesario, J. & Higgins, E. T. (2007).

Making Message Recipients“Feel Right”How Nonverbal Cues Can Increase Persuasion.

Psychological Science, 19, 415-420.

どういう風に振る舞えば説得の効果を高めることができるのでしょうか?

今回は,どのような非言語コミュニケーションが説得に効果があるのかについて【制御焦点理論】に基づいて検討したCesario & Higgins (2007) の論文を紹介します。

制御焦点理論:成功を求めて行動する人と失敗をさけて行動する人

制御焦点理論(regulatory-focus theory; Higgins, 1998)によると,人の行動方略を動機づける志向性には,促進焦点と予防焦点の2つがあるといわれています。促進焦点の人は“成功を求めて”行動しようとする人で,熱心さや助長するような行動を好みます。予防焦点の人は“失敗をしない”ように行動しようとする人で,用心深い行動を好みます。この個人の制御焦点と今から取り組む課題の方略が合致していることを“制御適合”といいます。制御適合していると,人はその行動に対して心地よいと感じます。

個人の制御焦点傾向と合致した説得のほうが効果がある?

制御焦点理論をもとに,Cesario & Higgins (2007) は,説得の受け手の制御焦点傾向と合致する振る舞いで説得を行った方が「説得力がある!」と感じるのではないかという仮説を立てました。この仮説を検証するために,まず参加者に個人の制御焦点傾向を測定するアンケート(Regulatory Focus Questionnaire; Grant & Higgins, 2003; Higgins et al., 2001)に回答してもらい,その次に「学童保育に関する新しいプログラム」について論じる人を映した動画を見せました(Figure 1)。この動画には,説得者が熱心な身振り手振りをするもの(Figure 1上)と,用心深い感じの身振り手振りをしているもの(Figure 1下)の2種類ありました。参加者のこの2つのうちどちらかを視聴した後に,どのくらい説得力があったかを回答しました。

その結果,受け手の制御焦点と一致した身振り手振りのスタイルのほうが,説得の効果が大きかいことが明らかになりました(Figure 2)。つまり,促進焦点の人は,熱心な感じの身振り手振りで説得を受けたほうが「説得力がある」と感じるが,一方で予防焦点の人には用心深い感じの身振り手振りで説得されるほうが「説得力がある」と感じるようです。

ただ,説得の受け手の制御焦点傾向と一致していないときは,一致しているときよりも説得の効果が小さくなっています。受け手が促進焦点か予防焦点かを【見極める】ということが,説得を成功させる秘訣の1つなのかもしれないですね。

【引用文献】

  • Grant, H., & Higgins, E.T. (2003). Optimism, promotion pride, and prevention pride as predictors of quality of life. Personality and Social Psychology Bulletin, 29, 1521–1532.

  • Higgins, E. T. (1998). Promotion and prevention: Regulatory focus as a motivational principle. In M. P. Zanna (Ed.), Advances in experimental social psychology (Vol. 30, pp. 1–46). New York: Academic Press.

  • Higgins, E. T., Friedman, R. S., Harlow, R. E., Idson, L. C., Ayduk, O. N., & Taylor, A. (2001). Achievement orientations from subjective histories of success: Promotion pride versus prevention pride. European Journal of Social Psychology, 31, 3–23.