態度の主観的な両価性における非対称性

投稿日: May 05, 2017 2:22:59 AM

態度の両価性は,態度の強さの一側面であるといわれており,近年の態度・説得研究でホットなトピックです。Snyder & Tormala (2017) の研究では,主観的な両価性と実質的な葛藤の数との関係について,従来とは異なる点を明らかにしました。

主観的な両価性

たとえば,チョコレートはおいしいけどカロリーが高いというように,人はある対象にポジティブな反応とネガティブな反応の両方を持っています。このようにある態度対象に対して,ポジティブとネガティブの相反する反応が同時に存在する時に感じる,主観的な葛藤のことを「主観的両価性」といいます。

研究の目的

既存の態度の両価性のモデルでは,葛藤の数(ポジとネガがダブっている数)が増えるほど,主観的な両価性が高まるといわれています(Figure 2のA)。しかし,本研究では,この効果に2種類のバレンスの非対称性(positivity offsetとnegativity bias)が大きく影響し,葛藤の数と主観的な両価性に対称的な関係にならないことを示します。

バレンスの非対称性

positivity offset:デフォルト状態ではポジティブな評価をしやすいというものです。本研究では,ある態度対象にネガティブ反応のみを持つ時には,positivity offsetによるデフォルトのポジティブな反応傾向との葛藤によって,主観的な両価性が生じると予測しました(Figure 2のC)。

negativity bias:一般的にネガティブ情報のほうがポジティブ情報よりも影響が大きいというものです。葛藤状態(つまり,ある対象にポジティブとネガティブの両方の反応を持つ場合)では,negativity biasによってネガティブ反応の影響が大きくなるので,ポジティブ反応がネガティブ反応よりも多いときに,主観的な両価性が大きくなると予測しました(Figure 2のB)。


まとめ

3つの研究の結果を見ると,既存の両価性の理論とは異なり,ポジティブ反応とネガティブ反応の両方が存在する時には,ポジティブとネガティブの反応の数が同じ時に主観的両価性が最大になりませんでした。むしろ,主観的な両価性のピークは,ポジティブな反応の数がネガティブな反応の数に勝るときにありました(Figure 5のBを見ると,一番大きい数字(5.3)が対角線よりも左上にある)。

Snyder, A. I., & Tormala, Z. L. (2017). Valence asymmetries in attitude ambivalence. Journal of personality and social psychology, 112(4), 555-557.