2015年既読論文ベスト3

投稿日: Apr 07, 2016 3:44:36 AM

1.認知的熟慮性テスト(CRT)において,正解した人でも,最初は直感的な選択肢に引きつけられる。(2/22発表)

Travers, E., Rolison, J. J., Feeney, A. (2016).

The time course of conflict on the Cognitive Reflection Test.

Cognition, 150, 109–118. doi:10.1016/j.cognition.2016.01.015

【コメント】 推論のプロセスが並行競合型(直感と熟慮の処理が同時に生じる)かデフォルト干渉型(まず直感の処理があって,それでは不十分な場合に熟慮の処理が直感の処理に干渉する)という2つのプロセスを切り分けるために,マウストラッキングを用いているのが斬新で面白かった。特に,アンビバレントな状態を測定するときのマウストラッキングの分析手法とは違って,マウスがどこに位置していたのかその順番と停留時間を使うなど眼球運動の計測で用いられるような分析を使っていたのが興味深かった。

2.システム2の意思決定には甘いレモネードが必要。(4/27発表)

Masicampo, E. J. & Baumeister, R. F. (2008).

Toward a Physiology of Dual-Process Reasoning and Judgment. Lemonade, Willpower, and Expensive Rule-Based Analysis

Psychological Science, 19, 255–260.

【コメント】 システム2で処理されいるか否かを判断するために,魅力効果が生じるか否かを用いていたのが面白かった。神経科学的な知見から仮説を立てるという序論の流れも面白かった。

3.お腹が減っている時に買い物に行くと、たくさん買ってしまうぞ!(10/5発表)

Xu, A. J., Schwarz, N., & Wyer, R. S. (2015)

Hunger promotes acquisition of nonfood objects

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 112(9), 2688–2692.

doi: 10.1073/pnas.1417712112

【コメント】 「飢え」は,本来であれば飢えを満たすための「食べ物」を取りに行こうとするシグナルであるが,このシグナルによって「食べ物」以外のものもたくさん獲ようとしてしまうとのこと。「飢え」を実験的に操作した実験のみならず,ショッピングモールでのレシートを使った研究など,多種多様な実験方法でアプローチをしているのが面白かった。