イデオロギー的偏見はそれぞれの次元に対応するように生じる

投稿日: Jun 06, 2017 6:6:20 AM

Crawford, J. T., Brandt, M. J., Inbar, Y., Chambers, J. R., & Motyl, M. (2017). Social and economic ideologies differentially predict prejudice across the political spectrum, but social issues are most divisive. Journal of Personality and Social Psychology, 112, 383-412.

革新と保守は,ともにイデオロギー的に似ていない他者や集団に対して偏見を表す (Brandt et al., 2014)。イデオロギー的偏見の先行研究は,社会的イデオロギーや経済的イデオロギーといったように,イデオロギーが多次元であることが加味されていなかった。5つの研究 ( total N=4912 ) では,イデオロギー的偏見について多次元的に説明を試みた3つの競合する仮説(Figure 1参照)について検討した。

A: 次元特有対称仮説(dimension-specific symmetry hypothesis)・・・社会的イデオロギーは(経済的イデオロギーとの対立とは関係なしに)社会的イデオロギーが対立するターゲットに対して,経済的イデオロギーは(社会的イデオロギーとの対立とは関係なしに)経済的イデオロギーが対立するターゲットに対して偏見を持つ。

B: 社会的主要仮説(social primacy hypothesis)・・・次元特有対称仮説と同じく,社会と経済の次元のぞれぞれが対応するように,対立するターゲットに対して偏見を示すが,社会的イデオロギーのほうが偏見が大きい。

C: 社会的次元非対称性仮説(social-specific asymmetry hypothesis)・・・経済的次元には特有の仮説はなく,社会的保守は社会的革新よりも偏見を強く示す。

多様なターゲット集団,多様な偏見の測定(例,感情温度,世界感葛藤,IAT,独裁者ゲーム),そして多様な社会的イデオロギーと経済的イデオロギーの測定を用いて,本研究では比較的一貫して次元特有対称仮説と社会優先仮説を支持する結果が見られた(Table 6)。しかし,社会的特有非対称性仮説は支持されなかった。これらの結果から,偏見は次元特有であるが,社会的次元のほうが経済的次元よりも政治的な葛藤をより引き起こすことが示唆された。