⑫老婆も森林公園に行く

43号 平成24年3月発行

6月のある日曜日、私は新札幌バスターミナル発の「立命館慶祥高校」行きのバスに乗車した。 昼にある場所で息子と待ち合わせの約束をしていた。 途中のもみじ台団地までは2・3名の一般客も乗り合わせていたが、ほかは当然学生ばかりだった。

次々とその2・3名は降車していき、終点の学校前には、私1人が一般客だった。

バスを降りて学校には用事が無いので、向かい側の野幌森林公園トド山口へ向かって歩いていた。背後で呼びかける人の声がしたので、振り向くと女子高生2人が私に話しかけてきた。

「どちらへいらっしゃるんでしょうか?」

一瞬私はドキッとしたが、状況から判断して「ああ、おばあさん1人でどこへ行くのかと心配して聞いてくれたのね。 ありがとう。向かいにある野幌森林公園で、息子達が観察会に来ているので、昼頃待ち合わせしているもんだから。パンダクラブという団体で毎月1回やっていて、私も前には一緒に歩いたけど、もう皆とは歩けないので・・・。」

「ああそうですか。判りました。お気をつけて。」

「ありがとう」と私はお礼を言い別れた。

車に気をつけながらトド山口駐車場へ歩いて行った。

昼近いがまだ戻ってきていないので、私も道端の野の花をゆっくりと観察していた。

息子の友人で中学教師Tさんが先に戻ってきたので、備え付けのテーブルに向かって座り、つい先ほどあった事を話した。

Tさんは聞き終わると

「だけど、その女子高生はえらいなあー。勇気があるなあ。なかなか老人に話しかけないもんだよ。おばあさんだから話しかけたけど、おじいさんなら話しかけないよなあ。先生に注意するように言われているのかなあー。」と言った。

校舎のある場所の特殊性であろうか?今までに老人の事故か何かあったのだろうか?。

野幌森林公園は、札幌・江別・北広島の3市にまたがり、総面積2,000ヘクタールもある国内有数の広さで、舗装道路ではないが立派な道が延々と続いている。

一度足を踏み入れたら、どこまでも歩いて行ける。そのうちに迷ったり、身体のトラブルが起きたりするかもしれない。私はあらためてゾォッとした。

バスの中から2人の女子高生は、向かいに座った私を見ていた。 どこから見ても「老婆」である私。これから先も見守ってくださいね。どうもありがとうございました。

オオフガクスズムシソウ