ソ. 我が家の整備士

私が毎日のように乗っている自転車は、買ってからもう10年以上になる10年位なら手入れ次第では新車のように乗ることが出来ると思うが、私の場合は砂利道のそれも穴ぼこだらけの道を乗ってきたのてもうポンコツ。持ち主と同じである。

我が緑苑団地の主要道路が2年前にやっと舗装された。それまではどうせひどい道なんだからと、さびだらけの自転車に乗りながら、

「道路が良くなったら新車を買おう。」と決めていた。

先日、私がちょっとしたアルバイトをしている会社に行き、自転車を止めた時、会社の人がじっと古い自転車を見ていた。

その人は「アルバイト賃をためて新しいのを買ったらいいのに。」と、心の中で考えていたのではと思いながら帰宅した。

家には、冬は何もする事がなく読書に明けくれている夫が居た。これだと思い「新しい自転車を買うつもりだったけど、2、3万円の出費になるから磨いて見てくれないかしら?」

「一丁やって見るか!」と夫は乗ってきた。

結果は上々。さびとよごれの付いた金属部分は光り、こわれたと思って掛けなかった「カギ」も直った。

後輪のタイヤがすりへって以前交換したが、前輪もバンク寸前との事、自転車店に頼んだ。

もうこれで新車を買う必要がなくなったというか、またこのポンコツに乗る事に決めた。

(1989年5月)