オ. タクシーとオバタリアン

年一度の「姉妹会」の一泊旅行は、今年から従姉妹も加わり層雲峡へ行く事になっていた。

せっかく旭川へ行くのなら美術館を見学しようと、早朝札幌駅へ集合した。

前日から札幌へ出ていた私と、従姉妹と妹の3人である。十勝から朝発ってくる妹達2人は昼頃の到着なので、待ち時間を有効にという訳だ。

3人とも旭川の街は不案内なのでタクシーに乗った。運転手は「1キロちょっとの所なんだけれどねえ。」と、さえない返事だった。

「どちらからですか?」

「札幌からです。はじめて常磐公園や美術館に行って見ようと思って・・・。」と、返事したのが失敗だったらしい。

何やらぐるりと遠廻りされたみたい。

オトギリソウ

その上舞い上がっている三婆が金持ちでもないのに

「私に払わせて」「いいえ私が払う」「・・・」と三人して財布を出していた。後部座席の真ん中の私には料金表示がばっちり見える。あれよ、あれよと料金は上がる。私は百円硬貨とダラ銭を次から次と出して足しながら手に持っていた。公園前で車が停車した途端、またガチャッと上がり800円近かった。

木材の街らしい落ち着いた建築の美術館で、一刻気取ったオバタリアン三人はすっかり目がさめ、帰りのタクシーは慎重にと話し合う。

最短距離を走って駅に着いたタクシー料金は540円だった。とりたててどうという話ではないが、一事が万事、充分に心して行動しなくてはと反省させられた。

(1991年6月)