⑬お元気そうですね

44号 平成25年3月発行

80歳を過ぎて2年、昨年から今年にかけて私が驚いている出来事が度々ある。老いがやんわりか超スピードかは呑気な私はあまり感じてはいないのだが・・・。

「お元気ですね」「お元気そうですねぇ」と声を掛けられる事である。友人達と一緒の時は勿論無いが、一人で乗り物を待っている時とか、地下鉄の空いた車内で隣り合わせになった時などである。私は何と答えて良いのか判らず「はぁー」と言ったり、黙ったりしている。私自身は、同じ老人にそういう声を掛けた事は無い。

ある時は、男性からもそういう声をかけられた事があり、話し好きそうな人の感じだったので、「私が九十歳位に見えるのでしょうね。だから良く出歩いているなぁーと思って、そう言われるのでしょうか。」と言うと、少しあわてて「いやー、そうは見えないけど」と答えていた。

他人様に実年齢を言う必要もないので、その時も、それでチョン。要するに私は人から声を掛けられやすい人間という事だろうと思う。

最近面白い経験をした。たまたま市電に乗ることがあり、ゆっくり走る車内で、隣の席に座った職業人らしい中年の女性に、「お元気そうですねー」と声を掛けられた。私は

「度々そう声を掛けられるのですが、何歳位に見えるんでしょうか?」

「70歳位ですか?」

「それなら何か差し上げなくては。もっと行っていますよ。ただ、気持ちは常に20歳ですが」と笑いながら言った。

すると「20歳には見えないですけど」と大真面目に答えるので、大笑いになった。

後の話しで判ったのだが、ヘルパーの仕事をしていて、大勢の老人を扱っている方だという事だった。背中が曲がっている私の姿勢を見れば、90歳にも見えるのだろうと思うが、座っている時はちょっと判らないだろうと思ったりして、高をくくっている。

他人に「お元気そうですねー」と声を掛ける人の本心を知りたいと思う今日この頃である。

札幌には沢山の人が生活しているので、その本心も一つではないだろうと思ってはいるのだが・・・。

オオカメノキ