メ. 宅配便 二話

その日の朝もニュースで「金丸、元副総理と佐川急便をめぐる5億円事件」を報じていた。7時を少し過ぎた朝食の最中に電話のベルが鳴った。

私が受話器を取ると

「佐川急便です。」

「えーっ!」

と思わず大きな声を出してしまった。

「荷物をお届けしますが、道順は?」

と、相手は落ち着いた声だ。

やっと気を沈めて私は家を教えた。宅急便は良く届くが、佐川急便は初めてだった。

荷物を受取る時、あまりの驚き方に反省してあやまった。相手はなれている感じだった。

送り主に電話でお礼を言いながら、

「朝早く佐川急便ですといわれてびっくりしたのよ。」

「今に総理大臣からも何か届くわよ。」と、あちらも悪乗りして一件落着。

サイハイラン

これは何年か前の事、昼間夫の留守中に電話の音。

「長屋ですが?」

「○○運送ですが振別の長屋さんというと、豚を飼っている長屋さんですか?」

私はムカッときたが、気を取りなおして「ちがいます。人間は一人飼っているけど、豚は飼っていません!」と私は答えた。

「はあー?失礼しました。」と恐縮していた。

職業に貴賎無し。実際に同じ振別で豚を飼育している長屋さんには悪い事をした。

これも深く反省したものである。

(1993年1月)