ミ. 「もうーいいー」

私には息子の所に2人の孫が居る。下の孫の百合子は2歳違いの姉や家族の話をじーと良く聞いている子だった。

そして話せるようになると、物事にはっきりと受け答えをする子に育った。三歳の頃のエピソード。

夜の7時頃、私は息子の家に居た。2人の孫はテレビでマンガを見て居た。

私は「これなんていうマンガ?」

「あんね。セーラームーンっていうんだよ。おばあちゃんの家ではセーラームーン見てないの?」

と百合子が言う。

私は「うーん見てないよ。」

「へえーそれなら何見てるの?」と聞く百合子に

「ニュースを見てるよ。」と言うと負けずぎらいな面もある百合子は

「百合子もニュース見るよ。」これには私も吃驚した。

ミヤマハンショウヅル

息子一家が新築した家に引越した時。二階の寝室で、はじめての夜を過ごした。

翌朝になり百合子が階段を降りながら、

階下に居る家の者達に言った百合子の第一声

「百合子この家大好き。ずっとこのおうちに泊りたいなー。」

テレビや新聞で政界の不正を見聞きすると、その歯がゆい結末に一庶民としては「もう、いい!」と叫びたくなるが、我が家の場合はもっと可愛いらしい話である。

百合子が三歳になった七・五・三のお祝いの、記念写真が送られてきた。

一人で写ってるのはいいが、5歳の姉と2人で写ってる方は、百合子がせっかく赤い着物を着ているのに、ほっぺがふくらみ、口許がぶーっととんがっている。

電話でお母さんに聞くと、写真屋さんが丁寧に、失敗のないように何回もフラッシュたいて撮ってくれるうちに、百合子が「もうーいいー!」と叫んだというのである。

フラッシュはいつもいやがり、家では顔に手を当てていたが、写真屋ではがまんしていたらしい。

泣きもせず、自分の気持ちを率直に言った3歳の百合子のことを聞いて、末たのもしい子と思った私が「ばば馬鹿」とは思うが、世の大人も不正に対しては、自分の意見をはっきり言える世の中であってほしいと思う。

(1993年3月)