⑮「殿」の隣に座り損なった私

46号 平成27年3月発行

久し振りに道立美術館に行った。7月5日開催の「徳川美術館展」を鑑賞するために。 娘が美術館のボランティアをしているので、 6月中旬に案内のチラシを置いていった。

好奇心のつよい私は、内容に惹かれ朝9時前に家を出た。その結果7時間も美術館に居る事になり、 我ながらあきれると共に、それが出来た幸せを感じた。

バス停二つ目なので、すぐ到着したが、開館は9時半なので、大勢の人と待っていた。それは、 その日の午後2時からの特別講演会「殿・文化を語る」尾張徳川家の22代当主徳川義崇氏の聴講券を貰うためにである。

午前10時半から配布するとあり、240名に無料とある。私は早く行ったつもりが、 百人目位だろうか。長い行列の中で券を受け取った。 二階のロビーで一休みした。その後「北海道初公開」の家康公の遺産を含め、「源氏物語絵巻」「侘びを知る茶の湯の世界」を鑑賞した。 亡き夫が健在だったら一番乗りで来ただろうと思いながら、この二つの内容は私にとって長年関わりがあるのでじっくりと会場を見て回った。

その後、昼食をとレストランに入ったのが失敗だった。あまり混んでいないと入ってみたが、 どんどん人がふえてきた。 講演会は2時からなので何とかなると思い待った。調理がはかどらないのか30分以上待たされた。

急いで食べて講演会場へ。同じ二階から入場出来るかとウロウロした後、レストランの係に聞くと「一階から」とのこと。 階段を急いで降りて、係の人に聴講券を見せた。

私が手に持っている券を見て一人の婦人が「あんた、今からそれを聞きにいくの?・・・。もう占め切ったとさっき放送があったでしょう。」と、 すごい見幕。 自分が貰えなかった腹いせの言葉を聞きながら案内人に付いて行った。

締め切りのつい立を動かして「階段登れますか」と聞かれ、 「はい」と答えて赤いじゅうたんの階段を、手すりにつかまり20段位か登った。

もう「殿」のお話は始まっていて、暗い会場を係員と背をかがめて入って行った。スライド上映中でホッとした。 入口に近い二つ目の席に私の分が一つ空いていた。

「殿」のお話はユーモアをまじえて、徳川家の珍しい話をされたが、あまり覚えていない。 朝9時からの成果がやっとむくわれた思いだけはした。

「殿」がお話を終えて席に戻ろうとすると、係の人が入口に案内した。

私は早く入場していれば、殿の近くの席だったのにと、自分の落ち度からとはいえ残念だった。