⑳ふっくらしたお話

北海道自分史友の会「会員作品集」掲載 2015年11月発行

札幌市からの敬老パスはとても、ありがたいと思っているが、落としたりすると大変な目に合うのが分かった。

市役所からの封書が届いた。あけて見ると、私が落とした敬老パスが届けられているとの事。それを受け取るのは手稲警察署とある。正直あまり行きたくない所ではあるが、受取期日は2ヵ月近く余裕があるが、気になるので早く行く事にした。

だが、手稲警察署はどこにあるのか分からないので、書類に書いてある電話番号にかけた。

電話に出た人は、小樽行の列車で稲積公園駅で降りて5分も歩けば着くからと教えてくれた。その日は天気も良いし、しばらく列車に乗っていないので、少しうかれて家を出た。

はじめて降りる駅なので、気を付けて稲積公園駅を降りた。

山へ向かってと聞いていたが、高速道路の下一直線の道を歩いて行った。5分などではとても着きそうにない。歩きながら右側の家並みがとぎれた先に、大きな建物が見えた。近づくとやはり手稲警察署だった。

1階の落とし物の窓口で話をすると、係の警察官が来てくれた。ふっくらとした、やさしそうな人だった。早速私の落としたパスを渡してくれた。

その後書類を二通「落とし物」「受取証」に名前を記入し印鑑を押した。

息子くらいのその人に私は

「私は85歳ですけど、何とか来れましたが、自分で来れない人、書けない人もいるでしょうね」

と言うと、

「電話で落とし物の内容を聞き廃棄してくれと言う人もいる。こういう書類を一つずつ片付けていかないと、未決の書類が山のようにたまってしまう」

と言っていた。

私は、御苦労さまです」とお礼を言って、受け取った敬老パスの残高は70円だった。

サイハイラン