ノ. 車と娘

札幌に居る娘が、4年間乗った愛車を手離すと言っている。まだ信じられないでいるが、私に似ずムダ口をきかない娘は、言った事は必ず実行するので本音だろうと思う。

免許を取る時も28歳の年の4月末突然の発表だった。一人でいろいろと考えた末に決心したのであろう。

「六月末の私の誕生日頃には合格するつもりなんだけど。」

と言ってはいたが、その通りにはなった。

手離す一番の理由は駐車場の料金値上げ。それと冬の除雪の大変さを言っているが、たいした事ではない。

地下鉄に15分程乗車する前後に5、6分歩けば職場である。もともと日曜ドライバーで、夫が常日頃「高い玩具だ。」と話していた。

免許を取ってから3年間位乗りこなしておけば、間をおいても運転は出来るというが、また車を運転するのであろうか。これで心配のタネがひとつ減る事にはなるのだろうが。

ハコベ

只、札幌に出た私が孫の所へ行ったり、どこかヘドライブしたりと、よく娘の車に乗せて貰ったので、正直私が不便になる。などと勝手な事を考える。

「あんたも○○ちゃん達の顔を見に行くのに列車などじゃ大変になるわね。」と、それとなく娘に話しかけると

「行かなければすむことでしょう。」

とにべもない。孫可愛さの私の気持は理解出来ないだろうから無理もない事。

車が届いたその日に、街中を80何キロメートルも一人で運転してしまったと聞く車大好き人間の娘が、はたして手離せるのか。

車を売る話はすすんでいると言うが、未だ駐車場にデンと車はあるはずである。

(1991年5月)