ヱ. 礼状

何歳になっても「お小遣い」を貰うのは嬉しいものである。

2月、札幌に居る母方の叔母を久し振りに訪問した。こちらへ戻ったあと私は礼状を出した。折りかえし叔母から返事の手紙が届いたのだが、現金封筒で中に一万円札が入っていた。

「15日は三人の孫達に小遣いを渡す日になっているのよ。この間あまり嬉しかったので、貴女にもお小遣いを送ります。」

85歳の、血のつながりはない、母の従弟の嫁にあたる叔母なのである。

私が守らなければならぬ母の実家の位牌が、叔母の家の仏壇にあるので時々私はお参りに行っている。

本家であった母の実家は、後継の弟が病死してしまい両親も亡くなり、この叔母の家だけが先祖の供養をしてくれている。

またまた私は礼状を書いた。子供達の家の用事で出札したのに、わざわざ汽車賃を使って来てくれて、と叔母が書いているので・・・。

アケボノシュスラン

両親もすでに居ない私に、実家だと思って気楽に来てほしい。お土産など絶対に持ってこない事といつも叔母にきつく言われている。

近々また訪問する約束を書いた。私の祖父母や両親の事も含めて、昔話の相手が出来るのは、私だけなのでいつも喜んでくれる。

息子や娘には叔母の所へ遊びに行った事は話しても、「お小遣い」を貰ったのは未だに言ってはいない。

この事は夫と他人さまに話すとしよう。

(1993年4月)