⑨「シーズネット」と私

40号 平成21年2月発行

7月29日夜、東京のテレビ局TBSから一本の電話を受けた。突然の事で吃驚した。(その後も2回受ける事になるのだが)

用件は「8月から、ガソリンをはじめ又々諸物価が上がるらしいのですが、家計簿を長年つけ続けていると、新聞記事で見まして是非取材をさせて頂きたい。」と言う事だった。

実は6月7日に道新の女性記者が家に取材に見え、その後7月4日の全道版に顔は出さない条件で掲載されるという事があったばかり。 でもなぜ東京のテレビ局がと疑問もわいたが、「出来るだけ古い家計簿を探してほしいのですが、15分後に又電話します。」と一旦切れた。 それから50年以上前からのが、あるかどうか?急いで押入れの上の棚から箱を降ろして探した。何年か前に燃えるゴミに出した記憶が頭をよぎった。 矢張り無い。その後、茶の間の戸棚の引き出しの中から最近のを探し出す。平成8年からは揃って有った。

15分後、電話が再び来たので、正直に話した。

「14年前からのでは、あまり参考にならないと思います。私3年前に夫を亡くし、一人暮らしですが、車を持たず、つましく暮らしていますから値上げはあまり切実に感じて無いのですが。」と話した。 それでも東京から取材に行きますとの事に「テレビに出るような顔ではないので。」と断ると、「とてもお元気そうなお声で。」と全然関係ない事を言い、「打ち合わせの後、明朝また、お電話します。」と言って切れた。

翌日、「札幌へは行かれない事になりました。残念ですが、どうぞこれからも家計簿をお続け下さい。」「ボケないうちはつけ続けます。失礼致しました。」と、これで一件落着した。

平成16年3月にも、年金特集で生前の夫と二人取材を受けた事がある。 不思議な事に道新の記事が出た後に、民法のテレビ局も取材に来た。他人様には、マスコミ好きな人間だと思われている事だろう。

あれも、これも「シーズネット」(新時代を創る高齢者の経験と活力のネットワーク)という長い副題のついた「NPO法人」に、7年前から加入しているからである。 その上、夫亡き後も私がどっぷり漬かっている事も原因であろう。でも恨みは勿論無い。

「シーズネット」は全道で800名以上の会員が居る。道内に5ヶ所の支部と姉妹シーズネットが、京都、三重、山形にある。札幌の北大の近くに事務所があり、毎日大勢の会員が集まってくる。

知恵袋講座に始まり、時事問題、井戸端会議、囲碁、マージャン、ダンス、合唱等々、30近いサークルがある。また、3カ所のサロンもあり、1ヶ所は市からの要請で開設した。自分の気に入ったもの・興味のあるものに、出入り自由なのが良い。 会員は40歳以上となっているが、平均は68歳位である。

何と言っても代表が京都出身の岩見理事長で、「社会福祉士」であり「高齢者問題」の第一人者でもあるのが良い。

事務所にはボランティアで10数名の会員が出勤して毎月通信を発行し、全会員に発送したり、その他の業務を手分けしてやって下さっている。

こんな状況なので何があっても無くても、テレビ局や新聞社が取材に駆けつける訳である。

私達夫婦が「シーズネット」に加入した動機は、決して高い理想を追って、ではなく、その頃事業の一つとして力を入れていたらしい、民宿に会員料金で宿泊出来るというのに惹かれたのである。 その頃、夫と二人フルムーンパスで全国を周っていたので、京都の会員宅には一週間も滞在させて頂いたりした。その会員の方とは、今も交流が続いている。

私が、いくつかのサークルに参加する為に、事務所に出入りする道産子の女の中でも、底抜けの性格をスタッフに見通されているのだろうと思う。

でもこれからの高齢者社会の理想の場でもあるシーズネットに、こんな私でも何かの役に立っているのかしらと自負している。夫が生前喜んで参加していた事を思うと、きっと遠い所から見ているだろうと、今日も家を出る私である。

アカゲラ