マ. 夏の日のミステリー

札幌に居る娘から電話が来た。

「○○という人から父さん宛に小包が届いたらしいけど・・・。不在につき○日迄局へ受取りにと書いてあるよ。」と、いうことだったが夫も私も心当たりのない人物だった。

先ずは品物を受取って見てからと考えたのが、今思えばトンマだった。近々私が出札する予定があったので尚更そういうことになった。

娘の自転車で10丁程先の郵便局へ受取りに行き、やっと前カゴに入れて持ち帰った。大きな箱の中身は高級寝具で、札幌のMデパート発送だった。挨拶状が入っていて、香典返しの品だった。ますますわからなくなった。

私は伝票と挨拶状だけ持ち帰った。夫は大樹からMデパートの係へ電話を入れた。

デパート側の説明によると、ある会社の社長が亡くなり、夫人は入院中。嫁いだ一人娘が香典帳を見てお返しを注文したそうだ。

たまたま、娘の家の近所で「長屋」とだけ書いた香典があり、電話帳でしらべて送った。という次第である。

電話は夫の名義である、こんど出札する時には連絡すると返事をした。2ケ月後に出札した私はデパートヘ電話をして、返品したい旨伝えた。私は浅ましくも、「もしかして菓子折りの一つ・・・。」などと考えていた。

娘の家に受取りに来たMデパートの係の人は、高級寝具と引き替えに小さなメモ帳を一冊置いて去った。

その小包に万が一危険物でも入っていたならと、今更ながら自分の愚かさにぞっとしたものである。

(1991年9月)