ク. 源氏物語を読んで十年

帯広のNさんから電話を頂いた。

「大樹の源氏の会も今年は満十年を迎えたわねー。何か記念行事をするの?」と、昨年から私が気にしている事への質問をされた。

Nさんは、帯広源氏輪読会の今年度の会長をしている方である。大樹の「源氏をよむ会」発足当時は、当町に在住して居た方だ。

講師もいない、会員同志の勉強会のリーダー格として、会を運営してくれていたので、それだけに感慨も一しおなのだと言って居た。

当初は十数人の会員で当番をきめ月1回、「いずれのおん時にか・・・」から読み進めた。現在は月2二回の例会で三分の一読みおえた。

会員は、地元の人と転勤族の奥さん達半々程で、今は半数の会員になってしまった。私が代麦のような立場で連絡係をつとめているが、荷が重い。

戦争中の勉強不足の補(おぎな)いにと入った会なのだが、Nさんに「何の会でも継続していくのは大変なのに、長屋さんは良くやるわね」と言われた。

私は「力のある他の会員が忙しい人ばかりで、私が結局暇があるということでしょうね。毎会のように出席しているので、何となく係になったようなものですわね。」

と答えながら、この10年間に欠席したのは2、3回だったなあーとしみじみ考えた。

誰の為でもない。私の今後の生きる糧として行こうと思いながら、源氏物語のとりこになっている自分に苦笑いしていた。

(1991年6月)