前回は、「話す」という力の順番についてお話させていただきました。
今回は「耳のチューニング」について書かせて頂きたいと思います。
この表現は、これまで何回も使っていたと思います。
しかし、詳しく書いていなかったので、改めてここで書いておきたいと思います。
いつも通り結論から書いてしまいますと、
「チューニング」というのは
『合わせる側の音を何度も何度も実際に出しながら、
合わせるべき側の音に合わせていく作業』のことです。
もっと言ってしまうと、
『自分の音を出してそれを聞きながらでないと、
相手の音と完全に合わせることができない』ということです。
ピアノの調律やギターのチューニングをしているのを見たことがある方は
直ぐに分かると思いますが、
何度も何度も実際に音を出しながら、合わせるべき音に合わせていきます。
どんなにプロの人であっても、
合わせようとする鍵盤や弦の音を実際に出してみなければ、
合わせたい音に調律することなんて出来ません。
音を出さずにチューニングをするなんて、まったくのナンセンスです。
しかし英語を “勉強” するときになると、
このナンセンスな方法を長年続けてきたのではないでしょうか?
音読よりも黙読し、単語や文のリズムやイントネーションよりも
頭の中は日本語でいっぱいになり、
英語の音なんて “雑音” として聴こうともしていなかったのではないかと思います。
これまでの英語教育では音を出さないのが “当たり前” でした。
テストで求められるのは日本語による単語の「意味」と「スペル」だけだったからです。
「話す」という視点が加わってきたことで、
発音の大切さ、流暢に話せることの大切さについて、
素直に認める雰囲気が出てきてはいます。
発音に関しては、私もある種の「憧れ」のようなものを感じていた時期もありました。
しかし、もっともっと強調したいことは、
『スピードが必要なんだ』ということです。
同時に「スピード」のためには『リズムも大切なんだ』ということです。
そしてそのためには『大きく息を吸って、大きな声を出してみる』
ということが大切になってきます。
英語には日本語に無い音がたくさんあります。
発音を良くしたいと思ったら、声の出し方も変ってくる必要が出てきます。
英語の音を出そうとすると、
日本語よりも口の筋肉を大きく使ったり、
口に中の奥のほうを大きく開いたりする必要が出てきたりします。
ちょうど合唱の時に “わざとらしく” 発声するときのような感じにです。
そして、単語ひとつひとつの “完全な” 音ではなく、
『文としての流れるような音のつながり』全体を意識して、
自分の口でも真似してみようという作業が大切になります。
最初はまったくできませんが、
それでもなんとなく続けていくと次第に慣れてきて、
自分の口から出る音とお手本としている音が次第に合っていきます。
そういう作業を続けることで、耳のチューニングが出来てくるのではないかと思います。
大切なことは、『聴いたものを自分の口でも、そっくりそのまま再生できる』ということです。それは頭ではなく、「体で覚える」ものだと感じています。