36作あけみのアパート

2018/12/10

「36作あけみのアパート」  男はつらいよ

今回お伝えするのは

第36作

はつらいよ 柴又より愛をこめてより



タコ社長の娘、あけみが突如失踪し

寅が探しに行くという流れで


その事をあけみの夫に伝えるために

満男の案内でさくらと博の3人が

あけみのアパートへ行くというシーン。



満男に案内されあけみのアパートへ



あけみの夫、シンゴ君に事情を説明に行く



説明を終えその帰り道のシーン。


曲がり角から出てくる満男とさくらと博の3人。

実はここからは寅さん記念館のすぐそば。


さくらの自転車に乗って満男だけが帰っていく。



約1分22秒のシーン。


後半のロケ地は分かるのだが…


この路地の先は行き止まりで

映画にでてきた場所はそこにはないのだ。


では前半の部分はいったいどこなのか?

あけみのアパートはどこなのか?




ヒントはこのシーン

赤枠で示した「9-2」のプレート。


で調べたのが柴又〇丁目9-2



柴又は1丁目から7丁目まである。

ちなみにあけみのアパートからの帰り道で映る

この場所は柴又6丁目


では6丁目9-2はどうなのか?

Googleで調べてみた。

何となく似ているような…

現在車が停まっているところにアパートがあったのでは?


では反対側はどうか?

こちらもGoogleでチェック。

う~ん、これと言って決定打が無い…

映画のようなブロック塀があったようにはみえない。

違うといえば全く違うような気がする。



ではその他の「柴又〇丁目9-2」はどうか?


1丁目~7丁目まですべてGoogleで見てみたが

そこは空地であったり、曲がっていく道がなかったり、

道路が大きすぎたりと

映画とは全くかけ離れた様子ばかりであった。



消去法でいくと柴又6丁目9-2がロケ地としては

一番映画に近い風景なのである。


こうなると「ここであって欲しい」という

バイアスが心の中で掛かってしまい

見つけた根拠がどれも無理やり感全開で

全く説得力のない状況となってしまった。



と、ここまでが約3年前くらいだったのだが

今回はもっと深く探してみようと思い再チャレンジ。



今回は実際に現場に行ってみた。

残念ながら写真は撮影していないため

Googleでご紹介。


柴又6丁目9-2には道路を挟んだ向かい側に

ムラナカ理容店」さんがある。

こちらのご主人さんに直撃取材をしてみた。


「このあたりで寅さんのロケをしていたというお話を

聞いたことありますか?」


「いえ、もう長年ここにいますけど

ロケをしたという話は聞かないですね~」


「やっぱり…。すみません、ありがとうございました。」


「あ、その話とは全く違いますが

ウチの息子は寅さんの映画のポスターに写ったことはあります。」


え?えええ!?


思わぬところから衝撃のお話が!


第10作のこちらのポスター

ポスター自体は皆さんもご存じのはず。


こちらのポスターに映る傘をさし参道を歩くお子さんが

なんとこちらのムラナカ理容店さんのご子息様なのである!


これは新発見か!と思ったが

実はこのお話、DVDマガジンでも紹介されている。

(詳しくはDVDマガジンをご購入しご覧ください。)



ということで柴又6丁目は

ロケ地でないことが確定したため

もう一度最初からやり直し。



では「9-2」とはいったいどこなのか?

映画用のフェイクなのか?

はたまたここだけは大船なのであろうか?


番地のプレートが映画用のフェイクであったり

ロケ地が大船であったりした場合は

恐らく発見は難しい。


映画のシーンを何度も見直す。

衣装の変化は見受けられない。

夜の感じも似ていて違和感がない。


唯一違うのはさくらの自転車のカゴに入れている

バックに付いていた白いタグが

後半では無くなっているくらい。


そんなところから考えた仮説は…



1.カゴからバックを出しているようなので

 車か何かに自転車を積んで移動したのでは?


2.それも近くに


3.柴又でない近く。



以上の3点から柴又の外側の住所を再調査。

一旦は南側の「小岩」を調べたがどうも様子が違う。

でその次に調べたのが北側の「金町」。



***金町を調査***



金町1丁目9-2

昔からあるような建物で周りの道も様子が違う。

ピンポイントで住所は出てこない。


…違う!



金町2丁目9-2

こちらもピンポイントでは出てこない。

道路に沿った番地は「9-12」なので違う。


…これまた違う!




金町3丁目9-2

「?」





ここは直感的に何かあると感じた。


更に詳しく辺りをGoogleで見てみる。


Google画像で1点だけ気になる部分を発見!


それがココ。

ブロック塀に埋め込まれたポスト!


映画のシーンでも似たようなポストが

博の後ろに一瞬映っている。



これはもしかすると…

物証かも!



位置を確認。


ブロック塀の右から2列目、

そして上から3段目



映画も同じ!

ブロック塀にポストが埋め込まれている事は

時々あるので珍しくはないが

埋め込まれている位置まで同じというのは

なかなか無いことである。


では反対側はどうか?

に、似ている…

ブロック塀はもう無くなっているし

建物も変わってしまってはいるが

建て替えられた建物の角の位置がほぼ同じ。


もうこうなると直ぐに現場の確認をしてみたいという

物凄い衝動に駆られた。


そこで柴又にお住いの吉川さんに緊急連絡。

発見の経緯と現場の検証をお願いしてみた。



その時の検証がこちら。素晴らしい内容です!

号外!!

あけみのアパートついに発見!!

なんと金町!!名前は『アカシヤ荘』

出典:吉川孝昭さん「男はつらいよ 覚え書きノート」より



吉川さんの取材力には

いつも感服いたします。

一気に今回のロケ地が

解明されました!





***




自身では国会図書館まで行き

当時の住宅地図でアパートの名前、

そして近隣の住宅について調べてみた。


赤い線が諏訪家3人が歩いたルート。


あけみ夫婦が住んでいたのは

「アカシヤ荘」

(黄色部分)


当時の航空写真を見ると

黄色枠で示した平屋の建物も写っている。



それでは今回のまとめ。



山田監督は角を曲がった先に

あけみのアパートが見えてくる演出を選んだ。


そして見つけたロケ地が

金町3丁目9-2

最初は家族の生活が見える演出を

カットインさせたかったのかもしれない。

奥に見えるのは奈良さんのお宅。

吉川さんの貴重な取材で山田監督の演技指導まであった

という新事実が判明!

お母様とお嬢様が家の中で演じていらっしゃる。



今橋さん宅(9-2)を右に曲がり「アカシヤ荘」が見えてくる。


現在は「9-2」の番地表示のあったブロック部分は

無くなっている。

恐らく車の出し入れのために間口を広げたためと

思われる。


「アカシヤ荘」は建て替えられ

現在は「クローバーハウス」

周りを囲っていたブロック塀は無くなっている。


あけみの旦那、シンゴ君がいた場所。

恐らくこの辺り。


今回の発見のきっかけになったポストが映るシーン。

同じ位置に現在もある。



そして帰り道。

ここからは柴又6丁目

寅さん記念館の近く。


良い機会なのでこちらも現場を撮影。

かなり家が建ち当時とは様変わりしている。


こうして今回のロケ地は無事解明したのであった!

チャンチャン。




***



余談ではあるが

この場所は第46作でも使われている。



さくらと博がくるまやから自宅へ帰るシーン。


後ろの階段は色は違うが当時と変わっていない。

山田監督はこの塀がお気に入りなのかも。

ちなみにここを曲がっても江戸川土手にはいけない。




場所は寅さん記念館のそばである。

ついでに立ち寄ってみてはいかがだろうか。