第14作オープニング

2018/5/9

「第14作オープニング」  旧ブログより


今回もまた世の中に周知されていない、最新情報をお届けいたします!

ご紹介するのは第14作「男はつらいよ寅次郎子守唄」1974年12月28日公開

第14作 タイトルバックロケ地_解明

昔 ある村にな、とても働き者の夫婦がおった

正直者で人には親切で・・・

村中で2人の悪口を言う者は1人もおりゃせん。

嫁にもろうなら、あんな嫁を

また、婿にするならあんな婿をと誰もがそう思うとった・・・。

夢のシーン

ゴホゴホ・・・

ゴホゴホ・・・

夢から覚める寅さん。

おじさーん、魚焼けてるよ!

美味いな、このイワシは!

・・・と、第14作は始まる。

タイトルが無いとこんな感じ 

四国小豆島の寒霞渓(かんかけい)、九州大分県の耶馬渓(やばけい)と並んで、

日本三奇勝のひとつ群馬県の妙義山

金鶏山、金洞山、白雲山の、三つのピークから成り、岩壁をあらわにしたその姿は、奇勝と呼ばれるにふさわしい神秘さ漂う存在感あふれる山である。そして手前には高田川が流れている。


この場所はこれまで大まかな位置は判明していたが、今回はほぼピッタリなピンポイントでの撮影位置を発見!

それがこちら! 

(上が映画、下が今回撮影した写真)

いかがでしょうか?

本当はもう一段川に近い場所まで降りて撮影すれば、もっと映画のようなアングルで撮影できたはずなのだが、降りるのは危険だったため今回はここまで。

それではここに至るまでの経緯をご紹介。



【撮影ポイントがここであるという検証】



黄色囲みの家に注目してみた。 

この建物の位置を特定するために

当時の航空写真で捜索。 

上部は映画のシーンを拡大。

下部は1975年当時の航空写真。


目立つ特徴をあげてみると


①・・・赤

背の高い木がある。

航空写真でも右側に大きく影が写っていてその高さがわかる。


②・・・水色

棚田のようにハッキリとした3つの段。


③・・・黄

赤っぽい細長い屋根。


④・・・ピンク

白くとても長い屋根。



そして現在の航空写真で確認。 

黄色囲みの建物は無くなっている。

逆にピンク囲みの建物が 

隣に新しく建てられている。



手前に高田川が映り

目印にした建物が映るエリアは緑で示した地帯。 

最初に予想したのは赤の場所。 

理由は水色で示した橋を入れたくなかったから。


早速Googleで確認

手前の山が大きすぎて

奥の妙義山が隠れて見えなくなってしまう。 

ここではない。

もっと離れた場所になる。


次に見つけたのがこの写真。 

映画と比較してみる。 

目標にしている建物の位置がかなりずれているが

妙義山の見え方はかなり似てきている。


場所で言うと

この赤の位置が映っているので

カメラ位置は緑で囲った部分である可能性が高い。 

ストリートビューがないため

あとは現場で確かめようと思い出掛けた。


予想では土手から黄色矢印の方向に降りれば 

映画のアングルに近くなるのでは?と思った。



***



5月某日


風は強かったが天気も良く絶好の撮影日和。


真っすぐに予想現場に向かってみた。


少し緊張気味に土手を下りてみる・・・



するとこれが全くの予想外れ!

まだまだ建物の位置が合わないのだ。



今度は川端橋まで行ってみることにした。

そこから撮影した写真がこちら。 

もっとわかりやすくアップで比較してみる。 

位置としてはドンピシャ!

赤線で位置比較。

後ろに見える妙義山のバラ屋根の位置もピッタリ!

ここである!!



あとは高さ。

川辺まで降りれば同じアングルになるのではと思ったが

これが結構危ない。


という事でギリギリまで降りて撮影したのが

最初にご覧頂いた写真なのである。 

もう少し広めにお見せするとこんな感じ。 

もう一段下に降りれることがお分かりいただけると思う。



映画では映っていない赤で囲った橋が気になるが 

これは恐らく映画を撮影した頃は

土手も少し盛り上がっていたのではないだろうか。 

そして多分セットであろう祠を

土手の盛り上がりと共に現在の写真につけ足してみると

見事に橋は見えなくなる。


また現在でももう一段下に降りて撮影すれば 

こんな感じで撮影できたはずである。



***



帰宅後

もう一度映像をくまなく探してみると

当時から変わっていない建物を更に見つけた。


それがこちら。


1975年から現在までほとんど変わらず同じであることがわかる。

これでまたひとつ物証が増えた。 

2か所位置が一致

もう間違いないと思う。

ここが第14作のタイトルバックのロケ地なのだ! 

今回写した写真にタイトルを合わせてみた。

場所はこちら。 

川端橋の上からも眺め良いです。 

お近くにお越しの際は是非! 

歌のシーンでのロケ地

14作オープニングでの不明ロケ地はまだまだ続く。


タイトルバックの後に出てくるシーン 

寅が土手のような場所を歩く。

ここは恐らくタイトルバックを撮影した高田川だと思う。

妙義山の見え方が同じであればどれも正解となるので

今回ここはスルー。


続いて出てくるのが

川のインサートを挟んでこのシーン。


田んぼ道を歩き 

小さな祠に手を合わせ 

また田んぼ道を歩いて行く。 

寅さんの向こうに妙義山が見えている 

の祠のロケ地は寅友であるちびとらさんが

2013年に解明されている。

「ちびとらの寅さんロケ地の旅」




今回はその前後である、そして解明する!


先ずはちびとらさんの発見された

祠の場所へ行ってみた。


先ほどの川端橋より車で17分位の場所。 

距離にして約900mくらい。 

こちらがその祠。


この場所を発見されたちびとらさんは

やはり凄い方だと

現場に行って改めて思う。 

柱の痛みにも歴史を感じる。 

この場所がいったいどこなのか…

その後に続く 

このシーンに気持ちが引っ張られ

単純に道を歩くだけの寅と思い込み

手前に映る石垣だけを探し続け

長らく解明できていなかったのだが


実はこの?@~?Bまでのシーンは

すべて同じ場所で連続しているシーンなのではと仮説。



理由は・・・


このシーンの建物(赤囲み)と


このシーンの建物(赤囲み)は 

この祠なのでは・・・ 

という仮説。



という事で今回もまた伝家の宝刀

1975年の航空写真で調査。



先ずは現在の祠の位置を確認。 


ここから1975年の航空写真と合わせる。 

ん?



ない?



祠が無い! 

赤点線の中に

あるべき祠が無い!!




もう一度整理してシーンを確認してみる。


今度は祠を水色で印


隣には背の高い木がある。 

このシーンでは 

隣に木が映っている。 

そして寅の歩く道。



もう一度1975年の航空写真を見てみる。 

大きな木はもっと右上の方にある。

農道は変わっていないので

そこを元にして考えると

実は赤丸の中に当時は祠があったのでは?

なお現在は大きな木は無くなっている。 

1975年当時

祠があったであろう場所に

このように上から撮影できる場所があるか…


あった!

(赤色で表示部) 

この上の場所から撮影してみた。 

映画と比較。 

何となく雰囲気はある。

道幅が変わっているので全く同じとは言い難い。


ではこのシーンはどうか?

カメラアングルを想定 

で、撮影した写真がこちら! 

映画と同じになるようにトリミング


向こうに見える山が同じ! 

道路も現在とはかなりずれているのがわかる。


ここで間違いないと思う! 

少し角度が違う事はご容赦願いたい。


2012年のストリートビューで確認すると

以前祠があったであろう場所の土手が

少し崩れているのがわかる。 

これが祠の移動と何かしらの

関係があったのかもしれない。




そしてこの後寅は 

どこかの寺門で 

ザクロを食べる。


ここは先ほどの場所から

約1kmほど離れた所にある成就院 

ここも祠と同じく

2013年にちびとらさんが執念で発見されている。

ちびとらの寅さんロケ地の旅


そしてこちらが今回撮影した成就院。 

残念ながら紅葉は無かった。 

そして、今回の一番の難所!!!!

この場所はどのロケ地本にも載っていない極めつけの新発見!!

この場所がこちら!

すっかり道は舗装され、全く映画の雰囲気は失われているが

間違いなくこの場所である。

ただ・・・

残念ながら今回は家に帰ってきてから発見となり

実際の現場写真は撮れておらず・・・

う〜ん・・・残念!!(T ^ T)

こちらはその後ちびとらさんが現場で撮影をされている!

ちびとらの寅さんロケ地の旅

14作ロケ地探索も大詰め!


続いて向かったのはこのシーン


橋の手すりの腰掛ける寅 

橋の外側に咲いていた花を取ろうとして

誤って帽子を落としてしまう。 

慌てて帽子を追いかけるが

すっかり帽子は濡れてしまい

案山子に被せて乾かすことに。 

と、ここまでが14作のオープニングシーン。

この最後の橋のシーンを撮影した場所を探索。



この橋は某ロケ地紹介本で

九十九川の「川嶋橋」である。

と書かれていたのを読んだことがあった。



で、以前もその情報を元に

Googleで探したことはあったのだが

今回もう一度Googleで確認。


橋には「昭和59年に完成」とある。

当り前だが木の橋ではなくなっている。



川岸の遠景 

寅が走っていくシーンの背景に

似ているような似ていないような…

映画で映っている白い横長のブロックのようなものもない。 

川には映画のような堰はあるようだが… 

ストリートビューで下見をする限り

この場所が撮影に使われた場所である確証が

何も見つからない…

むしろこの場所ではないのでは?

という疑念の方が大きくなる。

もっと広範囲に見てみようと

いつもの航空写真を使ったが

それでも決定的な事は見つからなかった。



これは最初から考え直さなくては

ならないのでは…



という事で自力調査を始めた。


先ずはヒント探し。



探索のため今回最初に注目したのはココ! 

先ほども少し触れたが何か直線的な人工物

コンクリのブロックを繋げているのだろうか…



九十九川であることを信じ

ひたすら川を上ったり下ったり。



そしてやっと見つけたポイントがココ!! 

横長に続くコンクリの人工物。道路の土手。

年月が経過しているので黒く変化している。



そして近くに九十九川も流れ

堰もある。 

そして映画に映るような 

石垣もある。 

しかし肝心の橋が無い… 

そこで登場航空写真!

現在は確かに橋は無いが… 

2000年頃までは橋はあったようだ! 

***



ということで

この日最後に向かったのがココ! 

成就院より西へ約3km

群馬県安中市松井田町高梨子付近




そして写真がこちら! 

堰もある。 

橋は現在建設中。 

コンクリが新しので色は白っぽい。



映画と比べて見る。 

似ているといえば似ているが

決定的な証拠がない。


あくまでも状況証拠のみ。


石垣で同じ形があるかもと思ったが

これもまた見つけられず…



しばらく物証を探したが何も進まないので

状況を打開するために

場所を移動。

OPでの最後のシーン 

このショットもここでの撮影ではないかと

予想していたのでこちらの調査に切り替えた。




予想していた場所が川の反対側だったので

そちらに向かってみた。



反対側は田んぼや畑が広がっているのだが

獣除けに電線が張り巡らされ

思うように動けなくアングル探しには厳しい状況だった。 

そして何とか見つけたのがこのアングル。 

映画にとても似ているがこちらも決定打が無い…





午後3時過ぎ

諦めかけていると1台の軽トラックが

直ぐ近くに停まった。 


降りてきたのは畑仕事にこられたご婦人だった。

「こんにちはー」と声を掛けられた。


声を掛けられこちらも「こんにちはー」と応えたが

車もあまり通らないようなこの場所で

青いファイル片手にウロウロしているその姿は

さぞ怪しい人物に映っていたに違いない。


近づくご婦人に思い切ってストレートに聞いてみた。


「あのー、

ずいぶん昔になると思いますが

この場所で寅さんの撮影があった

なんてお話、

聞いたことありますか?」


するとそのご婦人、何の躊躇もなく即答で

「あー、ありましたよ。

もー随分昔の話だけど・・・

でもそんな事聞かれたの初めて。

あんた何処から来たの?東京?」





えっ?!




普通この手の質問をすると

大概は寅さんは知っているけど

撮影についてはほとんどの方はご存じない。


当然今回も同じような答えが返ってくるものと思い

自分がここで何をしているかを明確にして

不審者ではないことを強くアピールすることを

目的としたとっさに出た質問だったのだが

予想外の答えだった!


「えええー?

ご存じなんですか?

実は私このシーンを探しているんです。 

似ていませんか?この場所。」



と持っていたファイルの写真をお見せした。


「ほー似ているねー。

よーくその写真だけで

ここまで来れたねー。」



しばらく東京都の風景との違いを談笑した後

このシーンはあまりご存知ないようだったので


「あのー撮影が行われたこと

ご存知という事でしたが

どんな撮影だったか

何か覚えていますか?」


「あー、

撮影のかた(スタッフ)に

リヤカー貸してくれって言われて。


なんか木造の橋が良いからって

それで今は無いけど前はそこに

橋があって

その場所で撮影したのよ。」



「あー、このシーンですね!」

(この写真を見て頂き) 


「そうそう木造の小さな橋。」



「その時の事

他になにか覚えていますか?」



「リヤカー貸してくれって言われて

ついでにそのリヤカー引いて

橋を渡ってくれと言われ

まだ小さかった娘と一緒に

橋を渡ったのよ。」




な、なんと!




そう、奇跡の出会いとは 

このシーンにチラッと映っていた方との

偶然の出会いの事!



髪を結わえた小さいお子さんと映る黄色い服のご婦人。

言われてみれば確かに歩いているには動きが変。

実はリヤカーを引いていたのだ!



もう興味が止まらない!



「映画に映るからっていうんで

高崎まで映画を見に行ったんだけど

自分はちょこっと足だけしか

映っていなくてすごくがっかりしたわー。」



もう40年以上も前の記憶。

チラッと映っていたのが

足なのか頭なのかはもう忘却の彼方。

重要なのはあのシーン映った方である事!

そのお話はどれもとても貴重な証言だ。



「娘が小さかったから

(昭和)48年頃だったかしら…」

(映画は49年公開。こちらはほぼ正解!)




橋は老朽で危険なため撤去されたようだ。

橋の名前も明確にしたかったのでお尋ねしたが

元々地元の方が農作業用に使っていた橋なので

特に覚えていないとの事。


この作品が第14作であることをお伝えし

とても貴重なお話が聞けたことにお礼を告げお別れした。




そうなのだ!

やはり橋のシーンは

ここで撮影されていたのだ!


これは決定的な証言!!



またひとつ

新しい事実が判明した! 

橋のシーンはここで撮影!


残念ながら当時の橋は無かったが

現在建設中のこの橋が出来上がった頃

またここに来ようと思った。






で、結局 

このシーンは未解決となっております。


もし情報お持ちの方いらっしゃればお知らせください。

よろしくお願いいたします。




おしまい。