オープニングロケ地、遂に発見!

2020/8/8


全国8000万の寅ファンの皆様!




今回ご紹介するロケ地は

これまでどのロケ地本にも載っていなく

また、誰もその場所を知ることの無かった

完全未解明のロケ地です。



これは歴史的な発見です。



今、この投稿をご覧頂いている皆様は

この事実を知ることで歴史の証人となるのです。



私と、そして親愛なる私の寅仲間たちが

長い長い月日をかけ、自分たちの許される時間の中で

このロケ地の発見に力を注いできました。



渥美さんのセリフもあり、演じてもいる。

映画を観た人の心にもしっかり残る重要なシーン。


ここは一体どこなのか。


この場所(ロケ地)が分からなければ

第11作の全てを楽しめたとは言い難い!



約7年前、寅友の吉川さんが仰った言葉です。



その言葉は私の心に大きく刻まれました。


いつか必ず発見する!

そう心に誓ったのでした。



それから時が過ぎ…


2020年夏

遂にその時が

来たのです!



夢にまでみた

あの難攻不落のロケ地!



リリー初登場の作品

第11作 はつらいよ 

寅次郎忘れな草

OPで夢から覚めた寅次郎がいたあの…

(通称)春雨神社!

この場所が

遂に発見されたのです!



それがこちら!

では映画のシーンと並べて比較してみましょう。

どうでしょうか。

お社自体は昭和54年に移設されていますので

多少鳥居との位置関係は違っていますし

田んぼはすっかり様変わりしていて

映画のシーンとは全く変わってしまいました。


でも鳥居、灯篭の持つ雰囲気は

映画に出てきた正にその物です!


映画ではもっと右からのアングルですが

後ろにある電柱と鳥居の位置を映画に合わせてみました。

地域はどこなのか?


今作の舞台となった北海道なのか。


はたまたいつもの山田組マジックを駆使した

大船撮影所周辺や神奈川なのか。


それとは関係なく千葉茨城なのか!




今回はこのロケ地発見までのレポートになります。

ごゆっくりお楽しみください。




***




映画冒頭

(夢のシーンが終り…)

うう~ん・・・

夢から覚める寅次郎

そこはとても雰囲気のある古そうな神社。

遠くに雷鳴が聞こえ、横殴りの激しい雨が降っている。

寒さに襟元を閉める寅次郎。

足元に古びた番傘を発見!


「月さん、雨が」

「春雨じゃ…」(この時のセリフで通称「春雨神社」となった)

傘が破けていることに気が付く

「濡れていくか⤵」

襟元を更に深~く閉じる寅次郎。


「はぁ~ああ・・・」


「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

タイトルバック

ここは江戸川で柴又とは反対側の松戸市側

主題歌が始まる



という一連のシーン。




シーンをご理解頂けたところで

今回の解明に向けた道のりを

ご紹介したい。




先ずはこの場所がどの地域なのか。

地域を特定するには情報が少なすぎる。

とは言え情報自体はしっかりある。


注目はこのシーン。

黄色い枠を拡大して色彩をハッキリさせてみた。

遠くに見える橋や水辺、そして鉄塔。大きな屋根の建物。



最初に目標としたポイントは3つ


1.鉄塔が並んでいる場所

2.少し弧を描き、下の部分が赤い橋

3.大きめの水辺がある


注目は3つめの水辺。

一見川のように見えるが

川であったら増水による氾濫に注意するはずなので

土手はもっと高くするはず。

こんなに低い土手になる事は考え難い。


もし土手が低くても大丈夫というなら

この水辺の正体は、増水の不安が比較的少ない

大きめの池


そこで狙いを絞ったのが千葉・茨城方面

特に牛久沼は34作でも登場するので怪しかった。

そんな中、約3年位前に発見した場所がこちら。

出典:Google

並べて見てみよう。

こは牛久沼の「三日月橋」付近である。



Googleなので正確なアングルにはならないが

雰囲気や状況はそっくり。



1.遠くに鉄塔もある。

2.下の赤い橋がある。(でも弧を描いていない)

3.もう少し高い位置から撮影すれば

 恐らく牛久沼の水辺も見えるはず。


探していた条件がほぼ揃っている。


だが。肝心の神社が無い!

今は無くなっていても昔はあったのでは?

期待を込めて昔の航空写真をみてもやはり神社は無い。

では昔の地図では?と国会図書館で住宅地図を見ても

やはり神社は今も昔も存在していない…


やはり違う!


これは結構ショックだった。

ここに至るまでもかなり探し回っていたからだ。


一度心が折れるとそこから先は中々進展しなかった。


自分の推測が間違っていたのだろうか?

そんな自問自答をしながら、あとはコツコツと

鉄塔ローラー作戦を続けるしかなかった。


とにかく鉄塔を辿って行って地図に印をつけ

その付近の橋と神社を探し回るという地道な方法。


それでもいつかは…と思いながら

千葉、茨城を探し続けた。



目標が鉄塔となると捜索範囲は一気に広がる。

千葉、茨城が粗方探し終わると今度は神奈川が怪しくなる。



神奈川も徹底的に地図に印をつけ鉄塔を探した。

でも雰囲気が違う。神奈川ではないような気がした。


そうなるとまた原点である千葉、茨城に戻る。


そんな時、別の捜索ポイントである橋を探している時に

偶然一枚の写真を発見した。


それがこちら。


これは旧手賀橋である。


現在はこちら

手賀大橋は千葉県柏市箕輪新田と千葉県我孫子市若松を

手賀沼を跨いで結ぶ橋である。(出典:Wikipedia)


1997年に現在の新手賀大橋が完成している。


それまでがこの旧手賀大橋(1964年完成)

お気付きであろうか。

実はこの写真には探していた3つのポイント

1.鉄塔

2.下が赤くて、弧を描いたような橋

3.大きい水辺


これらが全て写っているのである!!




もうこうなるとあとはこの付近の

神社を探すだけ!


探す手も震える程興奮していた。



あった!

直ぐ近くに神社発見!!

似ている!

これは非常によく似ている!

鳥居の形がそっくり!

とはいえ、鳥居は結構似ているものは多いので

これが決定打にはならない。



お社は47年も経過しているのでさすがに違う。


だが灯篭の上の部分も形がそっくり!

う~ん…でも灯篭も似ているものは多いから…



これはもっと突き詰める価値がある!

そう思ったとき、寅友仲間である

吉川さんとちびとらさんに

このシーンのスチール写真を

以前見せて頂いた事を思い出した。



その写真を改めて吉川さんに見せて頂いた。

それがこちら!

一番見たかった灯篭の全体を比較してみた。


全く同じ!



そして更なる決定打が!

鳥居に彫られている「奉獻」(ほうけん)の文字。


向かって左側が「

そして右側が「

それぞれを現在の写真と比較してみる。

先ずは「

続いて「

位置も書体も

ビンゴ!

である!!


もうここで間違いない!

確信を持った瞬間であった。



7月も終わろうとしていた

梅雨も明けきれぬ

ある日の発見であった。

事前調査で様々な物証は確認できたが

一目瞭然という決定打はまだ発見できていないままだった。

それは当時の神社の全体の写真だ。

それともうひとつ狛犬問題。

現在の写真を見ると鳥居と灯篭の間に狛犬がいる。

しかし、当時のスチール写真に狛犬はいなく

鳥居と灯篭の間には何もない。

これは一体どういうことか?


この神社について詳しく調べてみた。


千勝(ちかつ)神社


当社は、元禄2年(1689)の水神社創立にはじまる。

当時の氏子は5戸で、

新田の人びとがまず水神を祀ったわけである。



明治の「神社明細帳」には、

「水神社、社殿間数方弐間」とある。


また、千勝神社は境内社で、嘉永4年(1851)

6月信徒8戸で創立した石造の祠であり、

同じく石造の庚申塔が明治13年2月28日

信徒8戸で創立されたと記載されている。



その後、明治31年に石造鳥居及び狛犬が

造立されたが、鳥居の石額に「千勝□□、水神□」と

刻まれている。


これによってみると、当初の水神社に代って、

千勝神社が優位になってきたということであろう。


社殿は、昭和54年の沼べりの道路開通にともない、

移転修築されて今日に至っている。


我孫子市史 民俗・文化財篇 より抜粋



資料によると鳥居と狛犬は同じタイミングで

明治31年に同時に造立されている。


映画は昭和48年なので

当然撮影時にも狛犬は存在したはず。


ではなぜ写っていないのか?

ロケ地は99%ここで間違いなし!となってはいたが

狛犬の問題は少々不安に感じていた。


そんな折、千葉県の神社を検索していると

下の写真を見つけた。

これは同じ我孫子市高野山にある香取神社である。


ご覧の通り狛犬は鳥居の前に置かれている。

ひょっとしたら昭和54年に移転修築される前までは

千勝神社の狛犬も鳥居の前に置かれていたのではないか?


この推測を寅友で寺社に詳しいカケちゃんに聞いてみた。

「(十分に)ありですね


お墨付きを頂いた!

推測は間違えていない。

あとは物証だけ。


推測の裏付できるものは何かないかと探してみた。

するとこんな部分を発見!!

この写真はスチール写真の全体なのだが

黄色点線で囲った部分2か所。


拡大してみる。

これはひょっとして…

現在の写真と見比べてみた。すると…

狛犬の一部分と判明!!

やはり狛犬は鳥居の前に置かれていたのだ!


これで事前調査は完了。

あとは現場に行くだけだ。




***



8月某日



これまでの梅雨空が嘘のように晴れ上がっている。

映画の状況を考えれば、むしろ雨の方が雰囲気は

あうのだが、調査や検証を考えれば絶好のコンディション。


いざ!千葉県我孫子市へと向かった。


現場に入る前に我孫子市図書館に立ち寄る。

調査目的は

?@「千勝神社」の昔の写真

?A千勝神社の移動距離の確認

?B手賀大橋の昔の写真


?Bについてはこんな写真も見つけた。

新旧が並んで架かっている。貴重な写真。

手前が旧手賀大橋

奥が新手賀大橋。サイズが全然違う。

比較するとよくわかる。


?Aについては当時の住宅地図で確認すると

道路拡張での移動と史書にはあったが

実は神社自体はほぼ以前と同じ位置にあり

動いたとしても数メートル程度であることを確認。


?@については大きな成果を期待して臨んだ

図書館調査であったが、約2時間近く図書館で粘っても

結局発見することはできなかった。




午後2時、いざ現場へ!



遂に到着!

世界で初めてご紹介するロケ地

千勝(ちかつ)神社

約7年の歳月をかけ

ひたすら探し続けた第11作~忘れな草OPのロケ地


感動である!

驚いたのはそのサイズ感。

非常に小さな鳥居なのである。

身長170?pの自分でも鳥居をくぐる時には少し頭を下げる。

自然とお社にお辞儀する状態。

今回の事前調査で活躍してくれた狛犬と灯篭

何だか出迎えてくれているような気がした。


そして渥美さんのいたお社

当時とは違うが間違いなくここに寅さんはいたのだ。

おや?寅さんがいる??


次は現場の聞き込み

この時が一番緊張する。


お伺いしたのは千勝神社の裏手にあるお家。

裏手には数件のお家があるのだが

こちらはすべてご親戚関係。

そして注目は千勝神社の氏子の方々なのである。


私達の突然の訪問であったのにも関わらず

ご家族の皆様はとても親切に応対して頂き、

当時の貴重なお話をとても詳しく教えて頂けた。



約30分ほどお話を丁寧にして下さったのは

御年88歳のお母様とご子息様


当時は近所の方数人とご親戚の方と一緒に

撮影の現場を見学されていたとの事。


お話をまとめると以下の通り。


?@撮影されたのは平日の昼間で半日程度。


?A事前連絡なく突然山田組が訪れて撮影になった。


?B画面に映る耕運機を動かしている方(赤点線枠)は

  お話を聞かせて頂いたお母様のご主人様

?C遠くで農薬を撒いている方もご近所の方。

  ?Bと同じく?Cも山田組からの依頼で行われた演出である。

  

?D神社のお社の屋根は本来赤いトタン屋根なのだが

  映画の撮影のために山田組スタッフと地元の方数人で

  手分けして藁を差し込んで藁ぶき屋根に仕上げたこと。

雨は撮影用にホースでまいていた。

第8作メイキング映像「フーテンの寅さん誕生」より


?F大型扇風機を使って風をおこしていたこと。


?G画面左にある櫓は田んぼのための井戸であったこと。


?H神社の脇には馬車が通れるくらいの道であったこと。


?I田んぼは神社より一段下がった場所にあった事。


これだけの新事実が判明した。

やはり実際に映画の撮影を目撃された方の情報は貴重だ。


そしてここで撮影されたという事実は

こちらのご家族様、ご親族様と数人のご近所の方のみ

ご存知というだけで公表はしていなかったという。


今回の発見がなければ永遠に世に出ることはなかった

可能性がある。やはりギリギリのタイミングなのだ。



これだけ多くの貴重なお話を頂戴できたこと

ご家族の皆様、深く深く感謝いたします。

ありがとうございました。

そして、この撮影後に実際に目の前で渥美さんに

サインをして頂いた色紙がどこかにしまってあるという。

とても貴重なお品です。是非映画のシーンと共に

ご家族の宝物にして頂ければと思います。

残念ながら左手にあった田んぼは現在は無くなり

映画のような手賀大橋を見ることはできない。

水の館より撮影

そして赤点線枠にある建物

ここは1970年に開校したばかりの

県立我孫子高校のグランドにあった建物。

※ご存知の方ご教示ください。



2021/5/10

我孫子高校のグランドにある白い建物は運動部の部活棟という事です!

情報をお寄せ頂き、誠にありがとうございます!

(現在は西側に向きを変えて建て替えられたものがあるそうです。)



上から見るとこんな感じ

(1975年航空写真)

水の館より



お別れの時

約7年の月日の後、やっと出会えた千勝神社。

とても愛おしく思えてくる。

これからも寅ファンをよろしくお願いいたします。

最後に…

今回もご一緒させて頂きました吉川様(右手)

いつもありがとうございます。

吉川孝昭様のサイトにて

更に詳しく今回のレポートをご覧頂けます。

2020年8月8日号外!!

第11作「寅次郎忘れな草」OP

「春雨じゃあ・・濡れていくか・・」の神社

新発見!再現動画&現地調査レポート




今回もまた長いレポートにお付き合い頂きまして

誠にありがとうございました。



それではまた。



おしまい。