2019/11/13 黒い雲と美しい夕日

昭和の残り香 信沢あつし

Smell of oldies. A.Nobusan

午後3時半頃、コンビニに行こうと玄関を出ると、東の空が真っ黒だった。手前の家々は西日を浴びて眩しいほどであるが、東の空は恐ろしくなるほどの黒さ。

角まで歩いて、改めて東の空を眺める。向こうの空は、とにかく黒い。空を見て思ったのは北陸「三国の空」だ。宿に泊まり雷で目が覚めると、窓の向こうが真っ黒い空。その中を時折、雷が光る。こちら側は朝日を浴びて眩しいほどなのに、とにかく暗い空を何度か経験した。そんな日は、宿を出た時は眩しいほどの朝日だったのが、クルマで客先に行く途中で、吹雪になったり、雷雨になったり。地元のお客さんも「危ないから、喫茶店で様子をみましょう。」となったこともあった。コーヒーを飲んでいると、また眩しい日差し。北陸の空は、不思議て面白かった。

大通りまで歩いても、東の空は黒い。面白いように黒いから、しばらく黒い空を見ながら東に向かう。

歩道橋の向こうは明るい西日を浴びているのだが、背景の空は、いつまでも黒い。

開店準備中の赤ちょうちん。近所だから一度ぐらいは寄ってみたいが、明るいところにいると、向こうの空は一段と暗い。

八幡様の境内に入って行くと、太陽も随分と傾いたが、東の空も、それほどではなくなった来ているように見えた。

国道50号の元気21の前のコンビニへ向かうと、北の空も結構黒かった。ただ灰色の空の中に、薄っすらと赤城山の輪郭が見えてはいた。

コンビニを出ると、太陽は傾き、夕日になっていた。真っ直ぐに帰らず、黒い空を求めて東へ歩く。

国道50号のスバルのビル脇の通りには、昭和な店が残る。歩道橋に上がると、その昭和の屋根の向こうが少し夕日で色付きだしていた。

四角い歩道橋を、ぐるりと一回りして景色を眺める。北の空も、東の空も、黒い空でなく、夕刻の灰色の曇り空になってしまった。黒い空は終了。

一回りしてくると西の古いビルの陰に、太陽が隠れようとしてた。

歩道橋を降りると、今度は夕日を追うように西へ向かって歩く。午後4時頃だから、会社へ戻る車で渋滞が始まりだした。

薄暗くなってきた歩道を歩いていると、傾いた床屋の看板が目に入ってきた。青と白と赤の看板は植木にもたれかかるように傾いていた。ここの床屋はいつからやっていないのだろうか。近所にバーバーウスナミがあるが、あそこが営業している方が奇跡だと感じる。

行は黒い空を追うように東に、帰りは夕日を追いかけて西に。西の空は天気がよいらしく、美しい夕日となって行った。

沈む夕日を眺めたくて歩道橋に上る。階段を上って行くと正面に夕日が覗く。

西の空に夕日の姿はない。もっと南で沈みかけている。空の半分から下は夕日、上は黒い雲が漂う。快晴で空一面に夕日が広がるのよりも、この方が面白い。

家に近付くと、家々の隙間から、沈みゆく太陽が覗いていた。

家の近くまで来て、夕日が美しいから、それを映した家をと東を見ると、夕日に照らされた家々の向こうは再び黒い空になっていた。

こんな天気の時に表を歩けることもそんなにないだろう。