2019/11/09 好天の中、おしどり食堂
昭和の残り香 信沢あつし
Smell of oldies. A.Nobusan
11月9日はとても天気の良い中、おしどり食堂へと歩いた。昨日、11月13日にアップした空とは好対照と思い、こちらもアップ。
11月9日、おしどり食堂へ行った時の空。雲一つなく、どこまでも青かった。
11月13日、コンビニへ出かけた時の空。どこまでも黒い空が続いていた。
久しぶりの「おしどり食堂」。もう寒くなりつつあるが、青空で寒さを感じなかった。
本町の餅菓子屋さん「清香園」さんは、もう閉めてしまったようで人気がなかった。
表町に残る蔵は、周囲をトタンで囲まれているが、今も学習熟として健在。屋根の瓦が日を浴びて美しかった。
桜の木の影が長く伸びるが、八幡様のイチョウはまだ青々としている。
「だいたい12月になってからだよね」
同行のトロッ子さんが言う。
国道50号へと出ると南側の歩道を歩いて五差路の歩道橋へと向かうと、すぐにお茶の良い香りが、ほのかに漂ってきて思い出す。40年ぐらい前、カワイ楽器に行くときは、まだ表の機械でほうじ茶を炒っていて、もっと良い香りというか、あたたかな、ぬくもりある良い香りの空気になっていたことを。
「うちは、ここまでお茶を買いに来ていたよ。」
トロッ子さんの実家の話しだ。
昔、カワイ楽器のビルのあったところは、随分前に解体されたが、今もそのまま、広い駐車場になったままである。五差路の歩道橋に上がって振り返ると、そのカワイ楽器跡のお陰て日当たりが良いのか、その部分だけ国道50号の、けやき並木が色付いていた。そして、天気が良いので、四角い歩道橋をぐるりと一回りして、北側へ降りる。昔の八間道路の西側の歩道を歩く。
随分前に「はっけんどうろ」の名前をもじり「発展通り」となった。この広い通りが造られたことは発展の象徴だったのかも知れないが、今や古いビルが並び、新しい建物は少なく「発展」の文字が皮肉に見える。
最近、"前橋"、"発展通り"でググったが、1件も出てこなかった…。
イチョウ並木の八間道路を歩いていて発見した!! 各角の1本は雌の木のようだ。角の所だけ、もう銀杏の実がいくつか落ちてつぶされていた。
八間道路は、中央前橋駅のところで突き当り、Y字路の形となり、赤城県道と大胡県道へとわかれる。「美やこ食堂へ行く?」と出かける前に話に出たが、今日は「おしどり食堂」であるから赤城県道方向である。
美やこ食堂を向こうに見ながら、広瀬川を渡り、信号を渡ると花園公園方向へ。
信号を渡った先にはガソリンスタンド跡が残る。ここには昔は朝鮮飯店があった。その先の角は喫茶店の「メモアール」で、建物は変わっていないようだ。
メモアールの角を入ると花園公園。そして、昔は糸偏の産業で栄えた諏訪町である。この辺りは細い道も残り、往時の姿を残しているとともに、時代から取り残された感もあり、それが歴史を感じさせてとても良いのであるが。
トタン張りの家、コンクリートのゴミ箱などが懐かしい光景を作っている。
重兵衛湯の角を過ぎて、次の車は抜けられない細い路地を入って抜けたところが、おしどり食堂である。その細い路地には大きな南天の木がある。今年も鈴なりに南天の実が付いていた。
「ところで、鈴なりに鈴が付いているのを見たことある?」
「ないね~。」
「そんなに鈴がついたらうるさくてしょうがないよね。」
路地を抜ければ諏訪町通り。まだ賑やかだった時代の商店も少々残る。
おしどり食堂は久しぶりである。
「久しぶりだいね。僕が目の手術をしたの知ってる?」
「知らない。どうしたん?」
ということで、少なくとも、ここ4カ月は寄っていなかったということである。まあ、過去の実績を平均したら、6カ月に一度くらいかもしれないが。
そして、今回も餃子とカタ焼きそばである。2回に一度は、これである。
「好きだいね~、それが」とお姉さんに言われる。
「お母さんの具合を聞かなかったね。」とトロッ子さん。
お互い、来る前は、お母さんの様子も聞こうと思っていたが、自分たちの話しばかりをして、店を出るまで忘れていた。
まあ、また来よう。
もしかすると、以前も驚いていたかもしれないが、諏訪神社の脇は「諏訪会館別館」。
「別館だったか!」と驚く。道のこちら側には古い商店が残る。
布団屋さんは残っていたが、その並びの1軒は取り壊されている。いつ取り壊したのか。もう随分前に壊したのか。
古い商店の並びの隙間から、ブリキの鬼瓦が覗いていた。今時、鈑金の鬼瓦は少ないだろう。
「太陽の鐘をみていくんだね。」とトロッ子さんが言ったものの。木々に覆われて鐘は見えないのである。それが魅力的なのか、どうなのか。
諏訪橋を渡って左に曲がると、あかぎ信金が工事中だった。その先では、元ミヤマ会館が傾きだした日を浴びている。看板は変わっても、建物には面影があり懐かしく、好きである。
そのまま国道50号へ出ると、珍しく50号を渡らず右へと行く。いつもの八百屋であるが、午後の日差しを浴びた看板が、一段と渋く見えた。
歩道橋を渡ればいつものコース。数日前から咲き始めた銀木犀の下へ。咲き始めは、それほどでもなかったが、随分と香るようになった。でも、近付かないと香らないのが銀木犀。遠くの方で香っているのが金木犀なのだと思う。
まあ、それはともかく、良い天気が連日続いていることに気が付くのだった。