2023年のトロッコを振り返る 3
福島県白河の酒造と白棚線梁森のトロッコ跡を訪ねる
A visit to a small narrow gauge railway in Japan, Part 3, Jun. 11, 12 2023.
Small narrow gauge railroad and local railroad.
昭和の残り香 信沢あつし
Jan. 7th 2024. Smell of oldies. A.Nobusan
2023年のトロッコ旅(!?)を振り返る。その3
2023年は、私たちのワーゲンクラブの活動も春から再開となったが、新型コロナの間に、巷では色々とあり、5類感染症移行により、観光地、イベントはコロナ以前以上に活況となった感じだ。
6月の福島県喜多方市でのワーゲンイベントは例年熱塩温泉に前泊するのであるが、こちらも満員で泊れず、今回は前泊をやめ、イベント後に白河泊とし、月曜日に「大谷忠吉本店」に寄ることとした。
ホテルは旧街道に近い古いビジネスホテルにし、夕食はその近くの「白十字食堂」としたが、思った通り昭和が香る食堂だった。
事前に大谷忠吉本店さんには連絡をしており、午前11時過ぎが良いとのことで、その前に再び棚倉方面へ。ただ今回は手前の梁森というところだ。
白河から棚倉へは戦前まで白棚線という鉄道があり、戦後はバス専用道となっている。その梁森バス停である。
鉄道時代は、ここから「白河炭鉱」への約1.6kmの専用線が延びていた。
写真が梁森バス停だが、まるで列車交換が出来る駅のような風情で、その島式ホーム的な所の右側に専用線跡を思わせる道路が続いている。
私が興味を持ったのは、この白棚炭鉱への専用線跡である。
この専用線が面白いのは当初支線として敷設され、炭鉱会社の専用鉄道となったものの、間もなく大正9(1920)年には廃止となったということである。しかし、線路跡はほぼ道路として残っている点だ。その線路跡を辿れば、往時の何かが残っているかと。
辿っていくと、小さな倉庫に短いプラットホームがあった(右写真)。鉄道時代の物なのかとも思いたいが、新し過ぎる感じがする。
ちょうど梁森バス停脇の家から、老人が出て来たので声を掛けてみると「そうそう、この道の左側にずっと土手があって、その上をトロッコが走っていた」というのだ。
この専用線は廃止後は道路となり、その脇にトロッコの線路が敷かれたのである。駅のところは荷下ろし場として土手になっていて、その辺りに石炭がいくつかの山になっていたという。1067mmの鉄道であったが、最後はナローゲージのトロッコ軌道だったのだった。
廃線跡の道を辿るが終点の名残は見つからなかった。あとで空中写真で見てみると、右写真の車がいる辺りから左に分岐し、ホッパーなどの積込施設があったようだ。
梁森から戻って来るとちょうど午前11時。「大谷忠吉本店」の前にビートルを止めると、ご主人がすぐに出てきて、自動車を移動してくれると、下には線路が現れた。
以前電話をした時は「入口の所だけであとは残っていない」とのことであり、確かにその先は線路は見えない。ただ、レール自体はコンクリートで埋められたかのような感じではある。
線路は残っていないと言いつつも酒造の奥へと案内をしてくれたのだが、途中でレールが顔を出していた。(左写真)
思った通り、線路は新しいコンクリートの基礎の下に残っていたのだった。
浄化槽で穴が掘られてしまったところは撤去されたようであるが、他のところは埋まって残っているようだ。
最後に日本酒の「白陽」を買って店を後にした。
白河を出ると旧奥州街道ルートで大田原に出て、矢板からは廃線の東武鉄道矢板線沿いである。
何度か走っている道だが、今回は船生駅跡を目指した。船生駅辺りは線路跡が道路になっている。駅の少し手前でビートルを止める。「長峰荷扱所」跡付近である。
ちょうど近くの家の人が車に興味を持って話してきたので、聞いてみると、右写真の路地の辺りが跡だという。突き当りにブランコのある公園のようなところがあるが、どうもそこが土場、貯木場だったらしい。
そこから船生森林鉄道は北上し山へと入って行っていた。
その辺りも歩いてみたいが、もう午後3時を回っているため、この先は次の機会である。
右写真が船生駅の島式ホームだったであろうところから、長峰荷扱所方向を見たところ。今回は船生駅前を見てみたかったのである。
駅跡はホーム間の線路などを盛り土をしてホームと面一にし、そこに大きなコンクリートの基礎が残る。廃線後は倉庫になどになっていたようである。
昔の駅前と思われる所にビートルを止めて、駅前通りを歩く。古い倉庫が残り、学校帰りの子供たちが買い食いをしたであろう商店もあり、ペンキが消えつつあるパチンコの看板もあり、駅前の風情が感じられ、鉄道を感じることが出来た。
天気も悪く辺りは薄暗くなってきたが、長峰荷扱所跡のところて゜話をした方が「道の駅で矢板線の展示をしているよ」とのことで寄ってみた。
矢板線の往時の写真と現在の写真が比較できるように展示をされていた。一通り眺めて回ると矢板線についての冊子があり無料配布をされているようであったから、係の人に聞いてみると、ニコニコとして「ちょうと一冊ありましたよ」と持って来てくれた。
建物を出ると雨が降り出し、走ってビートルに飛び込む。日光に出てしまえば、毎年良く通る道。雨中の帰り道だったが、トロッコ跡もとりあえず三か所回り、予期しない矢板線の冊子を入手して、気分良くビートルを走らせたのだった。