2019/06/13 高畠の米鶴酒造

SakaGrapher Nobusan

"Yonetsuru Sake Brewery Co., Ltd." Japanese sake brewery, NIHON-SYU, OSAKE, Rice wine

昭和の残り香 信沢あつし

Smell of oldies. A.Nobusan

2019年6月、会社のリフレッシュ休暇を利用して東北へと行った。深夜に群馬を出て、朝に仙台を通過し栗駒山に登った。例の木製レールを見に登山道を少し歩く。とりあえず、木製レールと枕木らしきものをは見て、山頂の駐車場脇の食堂で昼食をして山を降りた。

その晩は、山形駅前で友人と飲み、翌13日は赤湯を経由して高畠へと行く。高畠の町を散策して昼食を摂ると、目的地に向かった。行く先は二井宿峠手前の「米鶴酒造」。なぜならトロッコの線路が残っているからだ。高畠からは古い二井宿街道を走る。昔の面影を色濃く残す良い街道だ。

その古い街道沿いに米鶴酒造はある。青空の下、緑の山々が迫る美しい地に酒造はあった。駐車場に入ると、事務所を訪ね、まずは売店に。

二井宿峠、七が宿峠が迫る山奥ではあるが、二井宿街道、七が宿街道が交わる地であるから、米鶴酒造の歴史は古いらしい。色々とお話を聞いた後で、昔ながらの「米鶴」を購入する。なかなか素敵な歴史を感じさせるラベルがいい。

売店は以前は「ミソ蔵」と呼ばれていたとのことだが、その裏には大きな煉瓦煙突と、大きな古い酒蔵がある。江戸時代の蔵を中心に増築されてきた蔵の中には、江戸時代の部分も残るとのこと。

ミソ蔵の隣は「大正蔵」。そのすぐ裏は、雪を落とすところではないだろうか、草生した空き地となっている。

売店でお酒を買うと、表に出てトロッコの線路を取材させてもらう。売店脇から20m程であるが、大きな蔵へとS字を描いて延びている。以前は、売店前にも線路は続いていたらしい。

線路の取材が済むと、古い酒蔵の周囲を一回りさせてもらった。大正蔵から各方面に延びるパイプが、古い工場らしさがあって良い。

その先には、国鉄の貨車のレムの車体が数両並んでいた。レムの「レ」は冷蔵車である。恐らく冷蔵庫として使用していたのであろう。

古い蔵の北側へと行くと、蔵の手前の緑に囲まれた中に煉瓦煙突がそびえていた。

街道へ出て酒造の正面へと行く。立派な歴史を感じる蔵、そして煉瓦の煙突。その昔の街道の賑やかさ、酒造の繁栄ぶりが伝わってくる。

さらに回って裏手に行く。板塀の向うには庭があり、昔の住まいあろうか。その奥に大きな蔵と煉瓦蔵と、重なり合う光景が美しいと思う。

雲ひとつない青空、山々の美しい緑。そして、古い街道と古い酒蔵。とても居心地の良い場所であった。

帰りは、国道113号に出て家路を急いだ。113号は廃止になった山形交通高鼻線の跡地だろう。時間にゆとりがあれば、そんな遺構を探しても楽しそうだ。

阿久津八幡神社を背にすると、正面には大鳥居。まだ自宅まで300kmほどあるので、とにかく国道13号へ出て家路を急いだ。ただし、米沢からは大峠で会津へ抜け、会津西街道で鬼怒川、日光に抜ける下道ルートである。会津下郷では、知り合いのレストランにより夕食。

二週間後の土曜日、いつもの前橋の青井食堂へ行き、友人と「米鶴」を開けた。とても美味しい、日本酒らしい味だった。友人は米鶴の味に「今まで飲んだ日本酒で一番おいしい」と大層感激をしていた。山間の古い酒造であるが、恐らく誰が飲んでも「おいしい」と言うお酒ではないだろうか。