第3ユニット出張報告―イランとの共同研究ならびに多文化共生現地調査―報告

第3ユニット出張報告―イランとの共同研究ならびに多文化共生現地調査―

第3ユニットでは、2015年9月11日から9月18日まで、イラン・アカデミーサイエンスとの共同シンポジウムならびに多文化共生現地調査を行うため、イランに出張した。参加者は、永井晋研究員(東洋大学文学部)、宮本久義客員研究員(東洋大学客員教授)、小野純一客員研究員(東洋大学非常勤講師)、堀内俊郎研究助手で、バフマン・ザキプール東洋大学大学院生が通訳などの業務を務めた。

 13日、イラン・アカデミーサイエンス(於テヘラン)にて、東洋大学国際哲学研究センターとの共同シンポジウムが開催された。イラン側の参加者はアブドッラヒーム・ガワヒー氏、所長のダーワリ氏など15名ほどであった。ダーワリ氏から、イランにおける哲学の現況についての話がなされた。日本側からは宮本氏が “The Acceptance and transformation of Buddhism in Japanese original religion (Shintoism) and culture”と題する発表を、スライドを交えて行った。小野氏は「井筒の言語理論:その問題点と可能性」と題する発表を行った。井筒俊彦の言語理論は言語相対主義ではないことを、分析哲学の側から論じた内容であった。両発表の後にはイラン側からの活発な質問がなされ、充実したシンポジウムとなった。

14日、Encyclopaedia Islamika Foundationを訪問する。イスラームに特化した百科事典を編纂し、そのために世界各国から図書などを収集している図書館である。同センターの所長や、ハサン・サイエド=アラブ氏など研究員合計7人と会合を持ち、情報交換を行った。15日は多文化共生現地調査として、マシュハドに移動し、イランの3大(4大)詩人の一人、フェルドゥースィーの墓、第8代イマームの墓を訪問した。

16日はアフワーズに移動し、サービア教(マンダー教)のイランにおける本部を訪問し、教団のトップを始め、在家・出家者など15人ほどと研究会合を持った。教団の高級僧侶の一人がペルシア語で当該宗教の始祖的な世界観や神学、聖典の内容や構成などを説明した。また、我々の質問に答える形で、儀礼や諸々のシンボルの意味などを詳細に解説してもらった。その後、チョガー・ザンビール、スーサ、旧約の預言者ダニエル廟を視察、その後、イラン人のイスラーム哲学研究者・井筒俊彦研究者を中心に日本とイランの哲学と宗教をめぐる議論が行われた。イラン側の関心が伝統と近代の関係を重要視していることが際立った。

イランとの共同研究は4年目となったが、回を重ねるにつれ深い議論ができ、他に類を見ない形でイランとの思想交流ができた。その成果の一端は『国際哲学研究』別冊7として刊行された。