「ポスト福島の哲学」映画『第四の革命』上映会・講演会(高橋真樹)

「ポスト福島の哲学」原発とエネルギー 映画『第4の革命』上映会/講演会(高橋真樹)

2013年5月17日(金)18時10分-20時30分、白山キャンパス1号館1B12教室において、2013年度はじめてとなる「ポスト福島の哲学」研究会として、ドキュメンタリー映画『第4の革命:エネルギー・デモクラシー』の上映およびノンフィクションライターで『自然エネルギー革命を始めよう』(大月書店、2012年)の著者である高橋真樹氏の講演が行なわれた。

『第4の革命エネルギー・デモクラシー』は、2010年、すなわち東日本大震災に先立ってドイツで製作されたドキュメンタリー映画である。ドイツは、東日本大震災以降、2022年までに同国のすべての原子力発電所を廃止し、再生可能エネルギーへとシフトする選択をした。このドキュメンタリー映画では、このような再生可能エネルギーへのシフトがどのように可能であったのか、このことを、ドイツのほかにも、デンマーク、アメリカ、マリ、中国など、世界各地で撮影を行ない、多角的に描き出したものである。

だがこのような自然エネルギーへのシフトは3.11以後の日本においてはたして可能なのか。映画上演に続く高橋真樹氏の講演は、まさに問いに答えるものだったと言えよう。高橋氏は、ノンフィクションライターとしてこれまで核廃絶、難民支援などに取り組み、ここ数年は自然エネルギーの問題について各地を調査してきた。この経験に基づき、ヨーロッパにおける自然エネルギーの事情と、日本における電力や各種エネルギー供給の実態を比較しながら説明を行なった。とりわけ、原発への依存/自然エネルギーへの転換という単なる二項対立を堅持するのに先立って、実際にエネルギーがどれくらい供給されているのか、不足しているのか、はたまた無駄になっているのか、そうしたデータを正確に把握することが必要であると述べられ、この点に関して分かりやすく説得的な説明がなされた。さらに、自治体や企業などが主導して自然エネルギーを活用することの困難や、それに対して地域社会のコミュニティパワーを生かした成功例などを具体的に挙げていき、最終的に、地域に根差しつつ、電気やエネルギーに対する意識の持ち方の変化こそが、「自然エネルギー革命」をすすめる原動力になると主張された。

会場には、授業のあいまをぬって映画上映や講演に参加する学生や、学外からも多くの来場者があった。質疑応答に十分な時間がとれなかったことが悔やまれるが、それでも限られた時間のなかで、高橋氏と来場者や国際哲学研究センター研究員らとの活発な意見交換がなされた。